霧島連山・高千穂峰で死にそうになった件(9)
急斜面の岩場のてっぺんに立ち、私は足がすくんだ。
ワラワラして力の入らない脚で、転びでもしたら、必ずどこかを骨折するだろうと悟った。
そうなったら、自力で下りられなくなる。レスキューを呼んだり大変な騒ぎになる。最終日に夫のM夫くんには会えるかもしれないけれど、今日の夕方くまモンに会うことはできないだろう。
いやいや、その前に、木村さんに甚大な迷惑がかかる。
そこで、私は決めた。「お尻で下りよう」と。
なにしろ靴が滑るのだ。やっぱり、付け焼き刃の装備ではダメだと痛いほど思い知った。それに、すでに私の尾てい骨には明らかにヒビが入っている。万全の安全策をとる必要がある。
まず一つの岩を決め、そこに座る。
それから手で体を支えながら脚を下に下ろす。
座って下ろす座って下ろす、の繰り返しで下りていくことにした。
そして、なんとか普通の坂道まで来た。
私はへろっへろのふらっふらで、もはや目の前がモヤがかかったように白かった。最後、平地に来た時にはもちろんうれしかったけれど、足が平地に慣れなくて、一歩一歩が浮いてる感じでいちいちドスンドスンとなってしまう。
そんな状態で、それでも気を抜くとカックンとなりそうなので、なおがんばって歩かねばならなかった。
最後は、目の前の白いモヤの中に、キラキラと星が出てきた。頭もしびれている。
どうなっちゃってるのか、私。いや、どうかなるんじゃないか、私!?
そんなゾンビのようなボロボロの状態で、私たちはついにやっと登山センターのようなところに帰り着いた。
ベンチに座ると、全然余裕の木村さんと水を飲み、木村さんは塩飴というようなものをくれた。そんなものが必要なのか。たぶん、軽く脱水症状を起こしていたのだろうと思う。でも、そんなことも、まったく私はわかっていなかった。
いつもなら高いので避けるポカリ○エット。ここでも自動販売機の中でダントツに高い160円となっていたけど、迷わずそれを買ってゴクゴク飲んだ。
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