霧島連山・高千穂峰で死にそうになった件(3)
いよいよ決行の日の朝。
私は旅行荷物をホテルに預け、一応自分なりの登山もどきの装備で駅のプラットホームにいた。
そこで、後ろに立っていたご婦人たちのうわさ話が耳に入ってきた。
「滑落事故がね、今まで2回はあったみたい。
一人は高校生の男の子で、次の朝に見つかって、若かったから助かったけど、
もう一人はおじいさんでね、朝、見つかった時には下の落ちたところで亡くなってたんだって」
なんかイヤな予感がして、ますます耳ダンボになる私。
「『天の逆鉾』見に行ってくるわ、って出かけて、夕方になっても帰って来ないからって奥さんが届け出たら、滑落してたんだって。
疲れてめまいでも起こして落ちちゃったのかしらねぇ」
やっぱり高千穂峰のことだった。
滑落事故が起こるような、そこはれっきとした山であるらしい。。。
いやいや、でも、初心者の女性でも皆さんちゃんと登ってると電話で言っていたではないか。大丈夫大丈夫と、私は不安を打ち消した。
確か、最後はバスで登山口まで行くのだったと思う。
到着後、ネットで仕入れていた心得に従って、一応、携帯用の簡易トイレを500円で購入。それからふと見ると、登る人は名前や住所などを届け出るようになってるらしく、紙と筆記用具と、それを投函する箱のようなものが置いてあった。
なんか、物々しいなぁ〜。
そんなことでも、いちいち怖じ気づく私。すると、年のころにして少し上かなと思うくらいの男性がすっと来て、記入し始めた。
「これって、書いた方がいいんですかね?」と私は訊いた。
そんな大げさなことをしなくてはならないような大層な山に登ろうとしているわけではないのに? という気持ちの現れだ。
「うーん、一応、何かあった時のために、形だけでも」と、その人は言った。
それで、ボチボチと上の空で私も記入し、投函。
「私、あまり(←本当は、ほとんど全然です!)山に登ったことないんですけど、大丈夫ですかねぇ?」などと、世間話っぽく訊いてみる。
「まあ、ここは大丈夫じゃないですか?」
タイミング的に、そのままいっしょに歩き出す。
そこは、頂上に神様がいる、つまり「天の逆鉾」自体が霧島東神社の御神体ということなので、麓に鳥居などがあって一応そんなのを見学。まだ平地だし、なんだか余裕が出てきた。
その人、仮に木村さんとするけど、木村さんは登山愛好家らしく、そういう周辺情報にも詳しく、いろいろ教えてくれる。
そのうち、だんだん地面が傾斜を帯びてくる。もはや息が上がってくる私。はぁはぁしてると、木村さんは涼しい顔で振り向き、「大丈夫?」という視線を送ってくる。
当然だ、ほんのちょっとした坂くらいでこれでは、先が思いやられる。。。
(これだから、ヤワな都市生活者は。。。)
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