霧島連山・高千穂峰で死にそうになった件(6)

私は子供のころ、ロープウエイがこわかった。ロープが切れたらどうなる!? みたいな妄想ばかり浮かび、あまり景色も見られなかった。

でも、自分は高所恐怖症だと思ったことはなくて、実際、絶対に安全とわかっていて、落ちるなどの妄想の余地のないシチュエーションでは、高いところから景色を眺めるのはむしろ好きだ。


山が好きな人がなぜ好きなのか、じっくり聞いたことはないけど、おそらく高いところからさらに遠くや眼下の光景を見るのが好き、ということもあるのだろうと想像する。だって、高所恐怖症だったら、そもそも山に登ろうと思わないはずだし。


すでにその過酷さで泣いた行程のあと、後に知ったところによると「馬の背」と呼ばれるエリアに来たと思われる。高千穂峰には、「御鉢(おはち)」という活火山部分があって、そのパックリとあいた火口の様が、まさに鉢を思わせる。


その火口の縁をね、歩くんですよ。。。

右も左もどっちを見ても、すぃーーっと吸い込まれそうにきれいにスベらかにウエルカムしてるわけですよ。

歩く道の幅は、私の体感で1メートルくらい。いいだけビビっていたので、実際より狭く感じていたのかもしれないけど、強風でも吹こうものなら、そして、体勢を崩してよろめきでもしたら、間違いなく滑落でしょう。


下方だけでなく、周りの空間も開けていて、なんと見晴らしのよいことか。私の前を歩く木村さんはキョロキョロとあちこち見渡しながら、景色を堪能してるようだった。

私はと言えば、馬車馬が周囲を見れないように目のところに着けてるアレくださーい!な状態(ブリンカー??)。周りの景色どころか、足元も目の前の路上の一点しか。遠くだろうが道の左右だろうが、見たら足がすくんで一歩も歩けなくなる。それくらいこわかった。


ここでめまいでも起こしたら終わりだろう。

帰りに足がフラフラだったらどうしよう!?


たぶん、せっかくの景色だったのだと思うけど、まったく見ることなく、意識的に視野を狭くし、ひたすら木村さんのかかとを見ながら歩いた。


私は山に向かない。

そして、きっと高所恐怖症なのだ。


今さらながら、こんなことを思い知ったのだった。。。

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