第15話
オデと侍女を激しい音と揺れが襲った。
木々が薙ぎ倒される音、地面が抉れる音、そして体の芯まで響く低い咆哮。さらに土煙が立ち目も開けられなかった。
「げほっごほっ…。大丈夫ですか救世主様?」
「ごほっゴブブ(大丈夫だ。)」
しばらくして侍女が声をかけてきた。オデはなんとか返事をしつつ、ゆっくりとまぶたを開ける。
「っ!」
酷い有り様だった。ほんの体1個分横をあの巨大牛が通ったらしく、木々が木っ端微塵になっており、地面も木々が引っこ抜けたあとでめちゃくちゃになっていた。
なんとか助かって良かったとほっとする。
『あーーもう!ビックリした!マイモンスターとの感覚を切っておけばよかった!驚いて椅子からひっくり返ったんだけど!』
オデと感覚を繋げている創造主も被害にあったようだった。
「危なかったですね…。救世主様に何かあったら姫様に顔向けできないですから…。」
侍女がホッと笑った。
『いやいやマイモンスターよりも、メイドちゃんに何かあった方が、そちらの世界の損失だよ!』
創造主が息荒々しく言う。
その通りかも知れないが、創造主ならせめてオデの方を心配するべきではと思う。複雑だ。
「あんな大型の魔物は初めて見ました…。先ほどの魔物よりも大きいなんて…。」
『確かにさっきの魔物製造してた奴よりも大きかったね~。名付けるなら巨魔牛とかどうよ?』
「…。(そのまんまだが、分かりやすくていい。)」
オデは体に降りかかってきた木の枝や土を払いながら創造主に答える。
侍女も体に着いた汚れを払う。
ブモォォォォォォォォォ…
「「!!」」
遠くで巨魔牛の咆哮が聞こえた。
そして、足音が聞こえてくる。どうやらこちらの方に戻ってきているようだ。
「救世主様…。隠れましょう…。」
そう侍女に言われ彼女と共に比較的大きな木の影に隠れる。
しばらくして木々が倒れた道を巨魔牛が悠々と歩きながら戻ってきた。
歩きはゆっくりとだが、巨魔牛の4つの瞳はくまなく動いていた。オデらを探しているのだろう。
侍女と共に息を潜める。
このまま通りすぎると思ったが、巨魔牛はオデらの気配を察知したのか立ち止まり顔を左右に降りながら探しはじめた。
冷や汗が止めどなく体中を流れる。呼吸も浅くなる。
侍女の方をちらりと見ると、彼女もオデと同じように額に汗を浮かべ、微かに震えていた。木からはみ出ないようにするために体をくっつけているため彼女の心音が激しく鳴っているのがわかった。
『こういう隠れるのって心臓がドキドキするよね~。あっでもマイモンスターは心臓が無いからわからないか。』
こちらはかなり緊張しているのに創造主がのほほんとコメントをする。イラっとしたがなんとかスルーする。
因みにオデの体に心臓が無いのは本当で、インプットされた知識によるとエネルギーを蓄えるコアみたいなのがオデを動かしているらしい。
どのくらいたったのか分からないが、しばらくして巨魔牛はオデらを探すのを諦めて前に進み、整備された道に戻り走り去って言った。
「「ふぅ~…」」
オデは侍女と共にホッと息をはいた。見つからずにすんでよかった。
『うんうん。見つからなくて良かった良かった。見つかっていたらマイモンスターなんてきっと一瞬で木っ端微塵だったに違いない。』
「…。(誰でも木っ端微塵になりそうだが、違いない。)」
創造主に同意する。あの大きな角で突かれれば突き刺さる以前に体が無くなるに違いない。
「っ!姫様!」
隣で息を整えていた侍女がふと気が付いたように立ち上がった。
そこでオデも気がついたが、巨魔牛が走り去った道はオデらが来た道。つまりは姫や騎士団らがいる方向なのだ。
『…まずいな。お姫様は後方にいたから真っ先に巨魔牛に突撃されるぞ…。ていうかあんな突進力がある魔物が後ろから突っ込んで来たら、屈強だというあの騎士団でも壊滅は間違いない。』
創造主が声を低くして言う。
「…救世主様!」
侍女がオデを呼ぶ。
「こぶ?(なんだ?)」
「ごめんなさい!」
そう言って侍女が頭を下げた。唐突のことに目を白黒させるオデ。
「私は…姫様のところに戻ります。護衛の任 を放棄したことをお許しください。」
そう言って侍女は再び頭を下げた。
『あ~いいよいいよ!全然許しちゃうぞっ♪』
「…。(なんで創造主が代わりに答える!)」
だがまぁ、元々1人で逃げるつもりだったから許すも許さないもない。
「ごめんなさい。」
創造主と話していると再度そう言って侍女は姫の方に走り去って言った。
『二人っきりになったねウフフ♪』
「…。」
オデも侍女に付いていけばよかった。
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