第14話
『ようやくあの場から逃げられたね~。』
創造主がのほほんと言う。確かに言われてみれば初めに逃げようとしてからかなり時間がたっていた。
「皆の者よく聞け!!ただいまよりこの騎士団の指揮を騎士団長に代わり姫殿下が執られる!!前方の方まで伝達し、指揮系統を再確認せよ!」
オデ達の背からは元騎士団長であった壮年の声が響いてきた。
思わず後ろを振り向く。
「大丈夫です…。じぃ様は個の武勲もさることながら、近衛騎士団長として無類の指揮術をもっていましたし、姫様はお若いながら、王族のどのご兄弟よりも多くの戦場に立たれておりますから…。」
オデが後ろを振り向いたのを心配したのかと思ったのか護衛の侍女が声をかけてきた。
『見かけによらずあの姫さん戦場経験豊富なのか。驚きだぜ。』
「…。(そこは創造主に同意する。)」
「ですが、姫様も私達と一緒に逃げて欲しかったです…。いくら先祖王族の祝福があるとはいえ相手は未知の魔物です…。もし万が一のことがあったら…。」
そう言って侍女は心配そうに後ろをちらりとみた。
『先祖王族の祝福ってなんだろう。筋肉ムキムキになって戦闘力が上がるとかかな?』
「…。(姫は筋肉ムキムキではなかったから違うだろう。もっと別の何かかと思う。)」
走りながら頭を悩ませる。聞こうにも言葉が通じない。
「あっ先祖王族の祝福といいますのは、王族に伝わる祝福でして…。指揮下にある配下全員に対して少しばかりの身体能力向上をもたらすことができるのです。」
侍女が察して説明してくれた。
『流石王族付きのメイドさんだぜ!察しが良すぎ!顔も可愛いし俺のメイドさんにしたいぜグヘヘ。』
「…。(気持ち悪い。)」
創造主は置いといて、姫の持つ祝福の効果が分かりすっきりした。
身体能力向上は少しばかりらしいいが何もないよりかは役にたつのだろう。
しばらく森の中を侍女と共に走ると、整備されたまっすぐな一本道にでてきた。
この道を進めば城下町近くの村にでる。そこまで出れば安全だろう。
「っ!…救世主様お止まりください。」
「こぶ。(わかった。)」
突如として侍女が走りをやめて止まるように言ってきた。
オデも走るのをやめる。
『どうしたの~?』
「…。(わからない。)」
創造主が聞いてくるが、まだオデも何故止まったかわからない。辺りを見回すが特に変わっているところはない。
「…前方より何かが来ます。」
「こぶぶ?(何かが?)」
侍女がそう言って前方を睨み付ける。
オデも前方を見るが特に何も見えない。
『ねぇ。なんかちょっと気持ち悪いのだけど、貧乏揺すりとかしてないよね?』
「…。(してない……!?)」
ふと地面を見て気がついた。足元に転がっている小石などが微かに揺れている。これはいったい。
「見えました…!」
侍女が強張った声で言った。
「こぶ。」
そう言われオデは目線を足元から前の方に向けると、まっすぐな道の先から何かがこちらに向かって土煙をあげ走って来ているのがわかった。
それはまだ遠いせいで豆粒ぐらいの大きさに見えるが、地面の揺れと微かに聞こえてきた地面を蹴る音からかなり大きいことが予想できた。
『急に言うのはなんだけど、お腹が空いた~。』
「…。」
…少し黙っていてほしい。
それは走るスピードが速く、あっというまにこちら側に近づいてきた。
近付くにつれてそれの容貌がはっきりとわかるようになってきた。
一言で表すなら巨大な闘牛。直径1メートル以上はありそうな荒々しい角。瞳が左右に2つずつあり計4つ。体毛は黒く、沈みゆく陽光に照らされはっきりとその体の輪郭がわかる。横幅も道いっぱいなため、まるで家が突進してきている錯覚を覚えた。
相手の方もオデらを認識したらしく4つの目でオデと侍女を睨んだ。
「っ!救世主様、森の中に!!」
侍女がそう叫びながらオデの腕を引っ張り道から横の木々の中に駆け込んだ。
『マイモンスターがどなどなされてる~。』
その時には、地揺れが立つのが困難になるくらいになり、奴が地面を蹴る音しか聞こえなくなっていた。
「もっと奥の方に………伏せて!!!」
侍女がそう言ってオデの腕を引っ張り地面に伏せた。オデもつられて地に伏せる。
そしてすぐに
「「『!?!?!?』」」
爆音と激しい揺れがすぐ横を走り去った。
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