2日目

第6話 波乱万丈な1日

「それでは救世主様こちらの部屋にお入りください。」

「こぶ(わかった。)」

 オデはメイドに連れられ、場内の奥にある部屋に連れられていた。


『いや~救世主様の方を選ぶとはね~。』

「…。(当たり前だ創造主。中か外、どちらが危険かを考えれば明らかに救世主として場内にいたほうがいいだろう。)」

 最悪、いざとなったら逃げだせばいいのだ。


『そうだけどさ~外の世界を早く知りたかったな~。』

「…。(知るか。)」

 そもそもオデが決めて良いと言ったのは創造主だ。

 

「あっ救世主様!」

「こぶ。(姫か。)」

 オデが部屋に入ると姫とその護衛であろう騎士が数名いた。


「コブブン?(この部屋は?)」

「ここは『導きの間』といいまして、人々の能力を可視化することができるのです。」

「コブブブッコ?(人じゃないオデにもできるのか?)」

「救世主様ならできますよ。」

「こぶ。(そうか。)」

 姫が笑顔で言う。オデにもできるようで良かった。


『なんでこのお姫様はマイモンスターと会話出来ているんだよ…。』


「早速ですが救世主様こちらの祭壇の上へお上がりください。」

「こぶ。(わかった。)」

 姫にいざなわれオデは祭壇にあがった。


「天より子を見守りし祖なる人々の魂よ。その偉大なる生をもって子の救世主たる彼の者の能力を表したまへ。」

「!」

 姫が祝詞だろう祈りを唱えると、あたりが眩しいほどの光で包まれた。


『うおっ!?』

「こぶ?」

 突如としてオデと創造主のパスが途絶えた。


「…!?」

 ぞくり。光が更に強まったかと思えば、姫と騎士とオデしかいないはずのこの部屋の中に多くの人の気配がするようになった。そしてその気配らはオデを観ていた。オデの細部に至るまでまじまじと見ていてオデの全てを見透かされているようで嫌な感じだ。

 しばらくして今度は会話が聞こえ始めた。しかし何を言っているか全くわからない。話している言語は分からないが、なんとなく言い争っているように感じる。

 やがてその喧騒も収まり光の強さも和らいできた。


「終わったみたいですね。救世主様お疲れさまでした。」

「…こぶ。」

 終わったのか。


「救世主様こちらの台座の方へ。」

「こぶ。(わかった。)」

 姫に呼ばれオデは台座に近付く。台座の上には大きく分厚い本が鎮座していた。


「救世主様の頁は…ありました!どうぞご覧ください。」

「コブブ(これを見ればいいのだな。)」

 姫が本を手に取りページを開いてオデに見せてきた。


「この本には先ほどの祖なる人々が生前の経験から対象者を判断し考察し理解したことが綴られているのです。」

「こぶ(ふむ。)」

 オデは姫から本を受け取りページを読む。



調査対象 異世界からの救世主

種族 不明

性別 無性

身長 120cm

体重 38㎏

元より持っていたと考えられる先天性技能

 ・不明言語

 ・異世界特有の力と思われる力の感知能力3種類(詳細不明)

 ・同種間による伝達能力テレパシー(詳細不明)

 ・絶対音感

 ・特定の振動による力増幅機能(詳細不明)

元より持っていたと考えられる後天性技能

 ・異世界の他国言語数種類(ただし異常が発生している模様)

 ・アルコール耐性

 ・異世界の獲得免疫数千種類(内訳省略)

 ・異世界特有の力操作術

 ・緊張緩和術

 ・俯瞰能力(詳細不明)

 ・過剰刺激耐性

 ・消化能力(詳細不明)

 ・環境適応能力

 ・異世界音楽に関する知識

 ・異世界の一般常識

 ・異世界戦闘に関する知識

 ・異世界戦略に関する知識

 ・その他分類不明の知識

他不明な元より持っていたと考えられる技能

 ・推定12種類(内訳省略)

召喚時に付与されたと考える救世主技能

 ・多国言語(数種類)

 ・人の持つ獲得免疫全種

 ・退魔法適性

 ・退魔法術効率化

 ・退魔法力感知能力

 ・退魔法完全耐性

 ・退魔法全知識

 ・魔法感知能力

 ・魔法耐性

 ・対魔時全能力大幅向上

 ・魔法知識

 ・武具の知識

 ・武具の戦闘法知識(10種類)

 ・一般常識

他不明な救世主技能

 ・推定8種類(内訳省略)

総評

 人の同身長の者と比べるとかなりの筋肉がついている。筋肉の質も柔らかく柔軟性がある。種族によるものかどうかは不明。

 本来持っていた後天性外付けの技能が不自然に多く、自然に生まれた生き物ではない可能性がある。

 救世主として授けられた能力は魔王討伐に大いに役立つであろう。

追記 アルコール耐性があることから酒の席で心強い味方になること間違いなし。



「救世主様は元より多くの技能をお持ちなのですね。」

「コブブンガ(オデも初めて知った。)」

 創造主は以外にもまともなものをオデにインプットしてくれていたようだ。…不明な技能は気になるが。


「救世主様、いつでも見れますように頁を紙に写しますので本を返していただいてもよろしいでしょうか?」

「こぶ。(わかった。)」

 オデは姫に本を返した。姫は部屋の外で待機していたのであろう文官を呼び模写を開始しはじめた。


『あーあーあーまーいーくーてーすーとー。』

「!?(創造主か!?)」

 突然創造主の声が頭に響いた。


『おっ!繋がったようだな。さっきは急に切れて焦ったよ~。』

「…。(オデも驚いた。)」

『それで今はどんな状況?』

「…。(今は…)」

 オデは創造主に説明をした。


『ほ~ん、まさか俺のつけた能力まで見抜かれたとは驚きを通り越して餅だな!』

「…。(意味が分からん。)」

 どうせ適当なことを言っただけだろう。


『それよりさ!付与された能力だよ!マイモンスターの情報が増えたと知った時もしやと思ったけどやっぱし能力貰ってたんだな!』

「こぶ!(なんだって!)」

 元の世界に帰られなかった原因はこれだったのか!


『それでそれでどんな能力があった?今どきの異世界召喚っていったらチート能力だからね~。俺TUEEEEEEできそう?』

「…。(それはわからんが能力はこんな感じだった。)」

 オデは授かった能力を思い出しながら創造主に伝える。


『う~ん。なんかこれといって無双できそうな感じの能力がないな~。不明の能力次第って感じか~つまんねぇ。』

「コブブ。(興味を無くすな。)」

 まったく創造主は自由奔放すぎる。

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