第18話  学生時代の思いで話に花が咲いた。

次の、場所では皆、けっこう酒もまわり、映画の話よりは誰と誰が好きだったとか、学生時代の思いで話に花が咲いた。


「大人しそうにして、時々悪いことするのが豊や。小学校のとき給食の食器をプールの水で洗った事件があった。アルマイトの食器を網籠に入れて運んで、洗い場で粗洗いして給食場に戻すのやけど、籠ごとプールにつけてジャブジャブとやたの。それを保健の女先生が見ていて、駆け寄っていきなりビンタ」と鈴子が言うと、


「そら、ビンタ喰うわ。お前とこの医院、衛生観念大丈夫やろうなぁー」と五郎が言う。


「それに懲りて、徹底しております」と豊が答えた。


「ハシケンはそっけないとこがあったけど、優しかった」と瑛子、「せやなぁー、ちょっと掴みどころがなかったなぁ」と伊助。「人一倍友達思いやったのも彼奴やった…責任感も強かったし」と五郎。


「気のあかんとこもあって、甘えたで…由美子さんに甘えてたよね」と鈴子が雨宮の方を見た。


「それは言えてる。死んだらええように言われるから、俺もはよ死のう」と雨宮。「お前が死んでも誰もええようには言わんよ」と伊助。


雨宮がハシケンを好きなのはそんな性格もあるが、話すとき人の目をじっと見る。そして話し出すとき、目をそらしふと遠くを見る。そんなちょっとした仕草が好きだった。


「瑛子を好きやったのは、雨ちゃんとハシケンやった。瑛子知ってたか」と伊助が切り出した。


「言ってもらわんもんわからんわ」と瑛子が答えると、


「瑛子を好きやったのは二人だけやなかったわ。じょうさんいたわ。男子学生の半分はそうやったんと違う」と鈴子が言う。


「えらい、オバーに言って貰っておおきに。鈴ちゃんかて、あんなに頭が良くなかったら三分の一ぐらいあったんと違う。あんたの上におれるのは長山君だけやもん」


「せや、鈴ちゃんが瑛子ぐらいの成績やったら、俺、立候補したで」と伊助。


「みな情けないなぁー。頭と違って男の値打ちはもっと下やで」と五郎が言うと、


「そやな、保健室で養護教員の先生に見せたぐらいやからな」と豊。


「お前やろ、変なこと言いふらしたのは、あれはな『いんきん』がひどいと言うと、先生がズボン脱げゆうたんや」と五郎。


「パンツまで脱げゆうたんか」と豊が切り返す。皆拍手。


段々、話は下に降りていくのも気の置けない仲間同士なら仕方がない。

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