第23話 ヒトラーの『我が闘争』・国家とは

e)ヒトラーの考える国家

『国家は商業団体や実業家たちの集まりではない。肉体的にも精神的にも平等な人間が、その種族のために結合した一つの結合体である。経済は単なる付加物に過ぎない。利口なイギリス人は、自国民の自由のためのみでなく、群小諸国(ヨーロッパの)自由のために戦うと声明したのである。しかるに、我々ドイツ国民は「パン」のために戦った』と第一次大戦の敗北理由を語っている(彼の言う東方の土地はパンのためでないというのだろうか)。


ここで永久の真理が語られる。

『国家は、決して平和的な経済によって建設されたのではなく、常に民族保持の本能によって、あるいは英雄的行為、ないしは策略によってのみ建設されたものである』と・・


『かつての英雄的なプロシャの一部たる大ドイツ国家が、かくまで病弱になったのは何故であるか?それは、毒薬を注射されたからではなかったか』とヒットラーは考えた。

勉強した結果、その注射とはマルクス主義であるとわかった⇒ドイツの将来はこれを殲滅することにかかっている。⇒マルクスも、マルクス主義者もユダヤ人である。⇒ユダヤ人も殲滅対象になる⇒ロシアは今やボルシェビキ(マルクス主義)の国である⇒殲滅対象。

と、至って単純明快な一つの敵集約理論を作り上げる。

ヒトラーの中にあっては、マルクス主義、ユダヤ人、ブルジョア新聞社、自由主義者、ボルシェビキ、ソ連、はどれも1本の串に刺されたものなのである。


ユダヤ人に対する偏見・差別は少年時代からあったようであす。ユダヤ人に対する偏見・差別はキリスト教のヨーロッパでは昔から根深く存在したものであった。ヒトラーは上に書いたような理由で彼独特な極端な主義者になったのである。


f)第一次大戦に従軍したヒトラー(ここの心情は、少しは・・)


『戦争のさなかにいるのに、銃後で革命の噂。軍需工場でストライキ、何事ぞ!敵を利する行為ではないか、後の方になって前線に送られてくる兵士の戦闘意欲は、戦争はじめの士気とは大きく違った』と怒る。そして敗戦、

『ホーヘンツォルレン家が王冠を冠らなくなったことや、祖国が今や「共和国」となったことを聞いて涙した。(俺は何のために戦ったのだ)そして銃後から一突きして敗北させた』これが、『背後からの一突き』論で、ヒトラーだけでなく、従軍した愛国・民族主義の兵士の多くも感じたところだった。ヒトラーはエーベルト・シャイデマン・リプークネヒトらの社会民主党達を憎んだと記す。


『祖国はどうなるのであろうか?古いドイツはかくまで無価値なものであろうか。我々は我々の歴史に対して義務を負っているのであろうか。このような事実をどうして未来へ引き渡すことができようか』と、ここで古いドイツを問い、未来のドイツを考える。そして、背後から一突きした彼らを「堕落した犯人奴!」と罵倒し、マルクス主義者=『無慈悲という以外では接近してはならない』と復讐を誓い、政治家になる決心をしたのである。

退院したあとも部隊にしばらくとどまり、軍の情報将校の目にとまり、諜報員として採用される。潜入調査に必要な教養のため、大学でゴットフリート・フェーダー*などの知識人の専門的な講義を聴く機会を与えられることになる。


*フェーダーはその後ナチ党の財政・経済問題を扱う重要な役職に就くが、ナチスが資本家から資金援助を受けるようになると、反資本家の彼は役職を解かれ、党をやめていく。


『私はその時まで資本主義とはいかなるものか殆ど知らなかった』と、述べている。

『国際金融と公債資本に関する基本的な討議を聞いて、生産的労働の結果としての、投機に頼る資本の相違がわかるようになった』と、「ユダヤ資本」への敵意はフェーダーの教えの影響と言われている。『かくて、私はユダヤ人カール・マルクスの仕事の真義を知り、彼の資本論を理解した(ほんまかいな?)。マルクス主義も、さらに国家経済に対立する社会民主党の戦いもともに、(ユダヤ資本)の国際資本の乗っ取り』と理解し、敵は共産主義者=ユダヤ資本と結論づけるのです。

諜報活動のためドイツ労働者党(ナチスの前身・極左的な民族主義)に接近し、結果として入党する。そして演説する機会が与えられ、聴衆に訴えかける演説の自身の才能に目覚めたと記す。

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