第13話「あれ?ㅤ世界観変わってませんか?」

「お待たせいたしました~、どうぞこちらへ~」


 巫女さんが戻ってきて案内してくれるっぽいけど……。

 うん、どうしようかな、不穏な話題聞いちゃったしな。


「わ、私、食べられる可能性あるんです?」

「大丈夫よ、土御門はそこらへんわきまえた龍だもの」


 今龍って言いました?ㅤねぇ、アマンダさん。今、サラッと龍って言った?

 平然とタバコふかしてるけど、龍って言ったよね?


「それではこちらに~。奈津さん、あとはよろしくです~」

「はーい☆ㅤささ、上がって上がって!」

「アタシはここで待ってるわね」


 ひらひらと手を振り、アマンダさんは私を送り出す。

 さすがに、着いてきて欲しくなってきた。


「あ、あの、私一人だと心もとないです!」

「だって、喫煙できないじゃないの」


 そう言ったかと思うと、アマンダさんはライターを取り出し、カチンと鳴らす。いい音だなぁ……じゃなくて、理由それ!?

 まあ確かに似合うけど!!!ㅤカッコイイけども!!


「頑張んなさい。マフィア2人と普通に喋れるアンタならどうにかなるわよ」


 そう言われるとそんな気もしてくるけどねー!?


「大丈夫だよ雪ちゃん。あたしもついてるよ☆」


 奈津さんと呼ばれた巫女さんが、ウィンクして手を握ってくれた。

 よ、よし、頑張れる気がする。部屋にでかいドラゴンが座ってたとしてもきっとどうにかなる。気合を入れるんだ、私……!!



 ***



 部屋に入ると、そこで待っていたのはとぐろを巻いた白い龍でした。

 わあ、こんな感じのイケ龍、千と千〇の神隠しで見たことある~……。


『よく来たね、月花つきはなゆきちゃん。ずっと見てたんだよ』


 白い龍……土御門権之助つちみかどごんのすけさんは、外見からは想像できないくらいフランクに喋りだした。

 いやこのカタコンベ、世界観本当にどうなってるの?ㅤ何でもありなの!?



『さて……君は、このカタコンベに来たのは初めてだよね?』

「え、は、はい。……初めてです」


 っていうか、こんなとこ、前にも来たなら覚えてるに決まってる。


『その割にはアンリくんに親近感を持っていたみたいだけど……どうしてかな』

「そう言えばそんな気もしてましたけど……。……うーん?」


 理由はわからない。

 アンリくんがお人好しで馴染みやすかったから……?

 それにしては、また、違う感情もあった気がする。


 彼の首が落ちることに、嫌悪感を抱くのは、私がグロいものを苦手だから……?

 ……ううん、それだけじゃない。もっと、別の気持ちがある。ただ……


 それは、思い出してしまってもいいことなんだろうか?


『アリシア・ミラージェス』

「……?」

『聞き覚えはない?』


 アリシア。

 アリシア・ミラージェス。

 聞き覚えがある。……というより、懐かしい。どこで聞いたんだろう。


『かつての君の名前だよ。産まれる前のね』


 権之助さんは、優しい声でそう言った。


『おかえり、アリシア。……もう、アリシアじゃないだろうけどさ』

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