第4話

通り魔事件



─とある日の教室─


男子生徒1

「聞いたか?『例の話』。」


男子生徒2

「ああ。新聞で見た。昨日だけで十三人殺されたらしいぜ。」


男子生徒3

「怖いなー。早く捕まってくれないかな?『例の通り魔』。この町から早く出て行くなり、捕まるなりして欲しいよ。」


男子生徒4

「昨日と合わせてもう五十三人殺されてるぞ!!マジでヤバイよ!!」


最近『通り魔』が出ているらしい。


神出鬼没で、現われたかと思ったら直ぐに姿を消す。


今までに五十三人の方が殺されている。


特徴は黒い着物を着ていて、ドクロの仮面を付けいる。


使う武器は日本刀らしい。


殺人鬼らしい。


紅蓮

「最近物騒だね。」


希子

「そうだね。でも私には紅蓮がいるから怖くないけど。」


紅蓮

「嬉しい事を言ってくれるじゃないの。」


僕と姉さんは最近の通り魔事件の事を話していると


騎士

「紅蓮!!」


なんか面倒な奴が現われたよ。


紅蓮

「何?」


騎士

「僕達で通り魔を捕まえよう!!」



……は…?……


騎士

「だから僕達で通り魔を捕まえようってば!!」


何言ってんの?


馬鹿なの?


頭の中がクレイジーなの?


やるわけ無いじゃん。


紅蓮

「やらない。」


騎士

「なんで!?」


『なんで』ってそりゃ危ないからに決まってんじゃん。


紅蓮

「危ないからに決まってんじゃん。大体なんでそんな危険をしなくちゃいけないの?」


騎士

「通り魔の所為で皆、恐がってるし、困っているからだよ!!僕達で捕まえれば一件落着だよ!!この町を僕達で護るんだ!!」


紅蓮

「嫌だよ。そんな理由で僕を巻き込まないでよ。大体警察が捜索しても見付からない相手をどうやって探すんだよ?」


騎士

「うっ…。」


紅蓮

「大体もし見付けたとしてもどうやって捕まえるんだよ?相手は日本刀を持っているんだよ?素手で勝てると思っているの?それに姿を消すって話もあるくらいなのに捕まえられると思っているの?」


騎士

「で、でも…。」


紅蓮

「まー、探すのは自由だから探しに行くかどうかは君、次第だけど僕を危ない事に巻き込まないでよ。」


騎士

「で、でも!!君と僕!!二人の力を合わせればきっと捕まえられるよ!!」


紅蓮

「勇敢なのは結構だが、僕を巻き込まないでよ。」


騎士

「我儘言わないで。」


紅蓮

「どこが我儘だよ。そしてどっちが我儘だよ。」


女子1

「ちょっと!!!!騎士が下手に出てれば調子に乗って!!!!ふざけんじゃないわよ!!!!」


女子2

「そうですぅ!!騎士くんがせっかく誘っているのにぃ~!!!!」


女子3

「凡人風情が騎士様の誘いを断るとはなんて恥知らずですの!!!!万死に値しますわ!!!!」


あー…面倒なのが増えた…。


紅蓮

「それをする事によって僕にメリットはあるの? 命懸けなのにこっち何のメリットもないじゃないか。 君が何をしようと勝手だが一々巻き込まないでくれよ。」


騎士

「メリットならあるよ!!!!」


お?なんか自信満々だな。


紅蓮

「何があるの?」


騎士

「皆の平和!!!!」


紅蓮

「…あのね、確かに平和である事はいい事だよ。でもね。それって皆にとってはメリットがあるけど僕にとってはメリットにならないよ。とにかく危ない事はしない。僕だって暇人じゃないんだから他をあたってよ。」


騎士

「紅蓮!!君は人の命をなんだと思ってるの!!」


コイツ…もぅ面倒くさいよ…。


紅蓮

「あのね、僕は他人の為に命を投げ出そうは思わないだけだ。それに僕は、まだ死ぬワケにはいかないからね。」


僕は姉さんに約束したんだ。


何があっても姉さんのそばにいて姉さんと、姉さんの日常を護り続ける事を…。


だから死ねワケにはいかない。


死ぬかもしれない危険なことは絶対しない。


紅蓮

「とにかく僕はやらない。やるなら他をあたってよ。それと授業始まる。」


騎士と騎士のハーレム達はしぶしぶ立ち去った。


本当にめんどくさい。


男子生徒1

「相変わらず面倒な奴等だな。」


僕に話し掛けて来たのは友人の『秋ノあきのみや コウ』


彼は昔、国の裏側に所属していて『拳帝けんてい』とまで呼ばれた実力者。


彼の能力は『硬化』

肉体を鋼以上の強度に一時的に変える力。その強度はダイヤモンドでさえ砕いてしまう。


紅蓮

「コウか。面倒だと思ったら助け船を出してよ。」


コウ

「こっちにもとばっちりがくるから無理。俺だって平和に暮らしたいわけだし。まぁ、いざ、ヤバくなったら彼奴らまとめてぶち殺してやるよ。」


紅蓮

「コウ、姉さんがトラウマになりそうな事は避けてくれよ。」


コウ

「相変わらずのシスコン。」


紅蓮

「やかましい。」


コウ

「シスコンはさて置いて通り魔事件の事だけど言わなくても分かっているだろうが首を突っ込むなよ。」


紅蓮

「言われなくても関わりたくないから。」


コウ

「一応言っておいた方がいいと思ってな。それに今回の通り魔事件の解決の為に国の裏側の奴等が動くらしい。」


紅蓮

「国の裏側が?」


コウ

「なんでもかなりの人数殺されてるし、通り魔事件の犯人がもしかしたら能力者かもって情報だからな。あと外出も控えろよ。」


紅蓮

「わかったよ。気を付けるよ。」


コウ

「…本当に大丈夫か?お前、運がすごく悪いし、この間の夜中たまたまシャーペンの芯が無くなったからコンビニまで買いに行ったらたまたまその近くで強姦事件があって犯人と勘違いされて逮捕されかけたり、先月は騎士が危ない奴らに喧嘩吹っ掛けたせいでナイフとか拳銃とか持った奴らと喧嘩をするはめになったりしたし。」


紅蓮

「まぁ、運はあまりいい方でないな。強姦事件の犯人と勘違いされたのは誤解は解けたし、危ない奴らとの喧嘩はなんとかなったし。」


コウ

「だから気を付けろよ。」


紅蓮

「忠告、ありがとう。」


─放課後─


希子

「紅蓮。バイトに行こう。」


紅蓮

「わかったよ。」


騎士

「紅蓮!!」


あー…面倒な奴が現われたよ。


今日、姉さんも僕もバイトがあって忙しいのに…。


紅蓮

「騎士。なんだよ?」


騎士

「通り魔事件。やっぱり僕らでなんとかしよう!!君と僕、二人の力を合わせたらなんとかなるよ!!」


どうにもならないよ。


てかさ、不良と喧嘩している時、いつもただ立っている奴が一体何が出来るんだよ。


立っているだけで何もしてない奴が一体何が出来るんだよ。


てか、喧嘩になった時、戦ってるの僕だけだよね?


こいつなんで何もしないの?


いや、下手に動かれると邪魔だけどさ。


でも、大体はこいつが一々不良のお兄さん達に喧嘩を吹っ掛けてるんだからこいつが戦うべきだよな?


いや、下手に動かれると邪魔だけどさ。


クソ、なんかイライラしてきた。


カルシウム不足かな?


家に帰る時、牛乳と小魚の煮干しでも買うかな。


とりあえずここはクールに断ってバイトに行くか。


紅蓮

「断る。そもそも今日はバイトがある日だ。」


騎士

「君は町の平和とバイトどちらが大切なんだ!!」


紅蓮

「おいおい。騎士。僕は一般市民だよ。どこぞの漫画みたいにかつて最強の剣士でも永遠と受け継がれてきた拳法を使える拳法家でも戦闘民族とかでもない。ただの一般市民に一体全体君は何を求めているんだよ?てかさ君は僕をなんだと思っているんだい?僕らはクラスメイトだろ?そもそもクラスメイトを危険な事に巻き込むのはやめてほしいな。」


騎士

「君と僕には人より強い。」


騎士!!君は強くないよ!!


騎士

「人より強い者は自分より弱い者を助けなきゃならないと僕は思うんだ。だから僕と君はこの町を護らなきゃならないんだ!」


紅蓮

「自分の考え押し付けんなよ。中途半端な覚悟と力じゃ何も救えない。あと覚悟だけあったってそれに比例するくらいの力が無ければ何の意味を成さない。」


僕は傭兵をしていた時、思い知らされた。


中途半端な覚悟と力じゃ何も救えない。


覚悟だけじゃ何も護れない。


覚悟と同じくらいの力が無ければ何も出来はしない。


僕は国の裏側の傭兵をした時、まだ幼いのもあったけど自分の力があればより多くの人を殺す事なく救い出せるのではないかと。


そう思っていたんだ。


けど僕の相手を殺さないという甘っちょろい覚悟の所為で僕の師は怪我をした。


師は僕の謝罪に対して


「君の甘っちょろい覚悟は嫌いじゃないが。戦場ではそんなモノを抱くな。さもないと死人が出る。」


僕は情けなかった。


そして自分の甘っちょろい覚悟と中途半端な力じゃ何も出来はしないと改めて感じた。


だから戦場では僕は感情を封じ、ただ敵を殺し、敵の大将の首を斬り落とす事に集中した。


後悔はないと思う。


誰がやらなきゃいけない事だから。


まぁ、そんな事があったからだろう。


僕は中途半端な覚悟で厄介な事には首を突っ込むのは嫌いなんだ。


なら、何故、騎士が厄介な事になったら助けるか。


それにはちゃんと理由がある。


一つ目、騎士の周囲の女子に変な噂をあまり流されたくない。


二つ目、騎士の周囲の女子達の家族がかなり厄介なのだ。

まず一人目ツンデレ幼なじみの父親は政治家、母親は弁護士。


次に二人目ぶりっ子娘の父親は警察署長らしい、母親はどこぞの学校の教頭先生。


三人目のお嬢様は父親は結構売れているオモチャの会社の社長、母親は新聞記者。


これだけ言えば分かるかもしれないが、下手をしたらこちらが社会的に潰されかねない。


まぁ、本当にヤバくなったら物理的に潰しに行くけど。


かつて『氷帝』と呼ばれたからね。姉さんに危害を加えるようなら全員、全部、氷漬けにしてやるさ。


まぁ、それをさて置いて…


騎士をどうしたものか…。


騎士

「僕は誰かの涙は見たくないから!!だから君と一緒に戦うんだ!!」


いや、君と一緒いて通り魔と出会ったら戦うのたぶん僕だけだからね。


紅蓮

「騎士、考え直してみなよ。警察が動いているんだ。僕らの出る幕ではないよ。そもそも、どうやって通り魔を探して捕まえる気だよ。」


騎士

「パトロールを毎晩する!!捕まえるのは僕らの正義の拳!!」


紅蓮

「素手で通り魔と戦う気?」


騎士

「僕と君なら出来る!!」


紅蓮

「却下。危ないわ。」


騎士

「えっ!?」


紅蓮

「とりあえず却下。それにバイトあるし。こっちは死活問題なんだよ。」


まぁ、国の裏側で働いていた時の口座に六十億円くらいあるけどあんまり使いたくないし。


女1

「ツベコベ言わずやりなさいよ!!このヘタレ!!アンタそれでも男なの!?」


女2

「そうですぅ!!せっかく騎士さんが誘ってあげているのにぃ!!」


女3

「凡人如きが騎士様に逆らうなんて万死に値しますわ!!凡人は騎士様に従っていればいいのですわ!!」


物陰に隠れていた騎士のハーレム達が現れギャーギャー文句を言う。


まったく面倒だよ。


紅蓮

「うるさいな。僕は危ない事は極力したくない主義なんだよ。正義の味方ごっこをしたいなら他所でやってくれよ。てか僕と姉さんの都合を考えてくれよ。僕と姉さんはバイトがあるんだよ。生活費を稼がないとならないんだよ。分かったらバイトに行かせてくれよ。お願いだから。」


騎士

「僕は友達と好きな人と好きな人がいる町を護りたいんだ!!」


紅蓮

「一人でやってよ。じゃあね。姉さん行こう。」


希子

「うん。」


僕と姉さんが立ち去ろうとすると騎士は僕の肩を掴む。


紅蓮

「まだ何かあるの?早くバイトに行きたいんだけど?」


騎士

「君には護りたいものはないのか?護りたいものの為に立ち上がる気はないのか?」


紅蓮

「護りたい人は護るけど見ず知らずの他人の為に戦う気は無い。こう見えても争いを好まない平和主義なものでね。僕は争いは好まない。触らぬ神に祟りなしって感じなんだよ。分かった?分かったらバイトに行かせて。どうしてもバイトに行かせてくれないなら奥の手を使うぞ?騎士、覚悟はいいか?」


騎士

「やってみろよ。僕の信念は絶対に折れないぞ。」


仕方ない。


最終奥義を使うか。


紅蓮

「野郎共!!騎士が希子にセクハラしようとしているぞ!!!!」


男子生徒達

「「「「なんだって!?!?」」」」


騎士

「えっ!?」


男子生徒1

「この女の敵!!」


男子生徒2

「我らのエンジェルの希子ちゃんに手を出した罪は重いぞ!!!!」


男子生徒3

「リア充だからってやっていい事と悪い事があるぞ!!!!このゲス野郎!!!!」


騎士

「え!?ちょっと!?!?」


男子生徒達

「「「「覚悟はいいか?リア充のセクハラ野郎!!俺達の非リア充の拳はちょっとばっかし響くぞ!!」」」」


騎士

「うわぁーーーーーーー!?!?」


男子生徒達

「「「「待てゴラァ!!!!!!」」」」


男子生徒1

「お前は『希子ちゃんファンクラブ』の同志に連絡を入れ増援を頼む!!あと武器の用意の連絡忘れるな!!」


男子生徒2

「了解です!!大佐!!」


男子生徒1

「お前は『オカルト研究』と『剣道部』と『槍術部』と『弓道部』に行って今、手短に手に入る武器をすぐ用意しろ!!箒でもモップでも竹刀でも構わない!!」


男子生徒3

「了解です!!大佐!!」


騎士と男子生徒達の鬼ごっこが始まったのであった。


紅蓮

「さてバイトに行こう。」


希子

「うん。」


こうして僕等は、バイト先へ行く。


ちなみに僕と姉さんの働いているバイト先は喫茶店で『エンジェルキッス斎藤喫茶店』と言う。


希子

「あともう少し話が長くなるようなら火鳥くんを殴っていた。」


紅蓮

「奇遇だね。僕も同じ事を考えていたよ。」


希子

「私、火鳥くん嫌い。毎回、紅蓮を危険な目に合わせるから。私は紅蓮に平和に行きて欲しいのに。もう、争い事をしなくていい立ち場の紅蓮を危険な目に合わせるから許せない。」


紅蓮

「そこまで僕の事を考えてくれてありがとう。」


希子

「家族だもん。当たり前だよ。」


姉さんは本当にいい人だな。


そして、僕は本当に幸せ者だよ。


かつて殺戮の兵器として生きてきた人間を家族としてそばにいてくれるんだから。


普通なら恐怖してもいいはずだ。


なのに姉さんは僕を恐れる事をしないで一緒にいてくれるんだから。


だから僕は姉さんを死んでも護らなきゃならない。


姉さんは僕と同等もしくはそれ以上の氷の能力を生まれてき持っている。


姉さんの事を国の裏側の連中に知られたら恐らく、なんらかの形で接触してきて、あわよくば国の裏側のメンバーに入れようとしてくるかもしれない。


そんな事をさせない為にも僕が姉さんを護らなきゃならない。


例え、僕が死ぬ事になったとしても。


例え、また僕が殺戮の兵器として生きる事になり、罪を重ねる事になったとしても。


姉さんを護る。


姉さんを護るその為ならば、僕は何にだってなってやる。


この命は姉さんを護る為に使う。


そして姉さんの平和な日常を守り抜いてみせる。


それが今の『氷帝』の生きる意味だと思うから。


ーエンジェルキッス斎藤喫茶店ー


バイト先へ到着する。


紅蓮

「店長、遅くなってすみません。」


希子

「遅くなりました。」


店長

「いやいや、時間ギリギリセーフだよ。珍しいね。いつもなら30分前には来ているのに。何かあったの?」


紅蓮&希子

「「ちょっとストーカーがウザくって…」」


店長

「ストーカー?最近物騒だね。ストーカーやら強盗やら痴漢やら通り魔やら。紅蓮くんも希子ちゃんも気を付けてね。」


紅蓮

「はい。分かりました。いざとなったら血祭りにしてやりますよ!!」


希子

「いざとなったら二度と犯罪が出来ないように両手と両足を切り落としてやりますよ。」


店長

「二人共、さらっと恐ろしい事を言わないで!!さっさと制服に着替えて仕事をして!!」


紅蓮&希子

「「はーい。」」


店長

「紅蓮くん。バイトは楽しいかい?」


紅蓮

「店長どうしたんですか?いきなり?」


店長

「いやー、気になってね。」


紅蓮

「そうですね。やっぱり楽しいですよ。勤務時間もそこまで長くないし、2連勤以上ないし、店長と話しているのも嫌いじゃないし。前、働いていた場所(国の裏側)だと時間は朝の5時から翌日の朝の5時まである事あったし、25連勤もあったし。」


店長

「24時間勤務!?25連勤!?」


紅蓮

「まったく大変で仕方ない勤務でしたよ。」


店長

「何!?そのブラックなバイト先は!?」


紅蓮

「あと、英語苦手なのに海外へ行かされるのは困りました。」


店長

「海外出張!?」


紅蓮

「それに比べたら全然楽ですよ。」


店長

「酷いバイト先だったんだね。」


まー、国の裏側は基本ブラックなもんですけど。


国の裏側の仕事だから仕方ないとは言え、学校をサボらないとならい時もあったからなー。


まったく、いろいろと困ったよ。


紅蓮

「そう考えると割と天職なのかもな。喫茶店って。」


店長

「なんか紅蓮くんが悟りだした!?」


紅蓮

「喫茶店を将来の夢にしてもいいかもな。ほのぼのしてるし、争い事も無さそうだし。」


店長

「紅蓮くん!!悟ってないで!!戻って来て!!」


紅蓮

「喫茶店のほのぼのマスター。悪くない将来だと思うなー。いや、先輩の言っていた老人ホームの介護職も気になるな。少なくとも前の仕事先よりは大変ではないだろうし。」


そんなこんなで時間は過ぎ、バイトが終わり帰宅中



─帰り道の途中の公園─


紅蓮

「買い物してたらすっかり遅くなっちゃったよ。」


希子

「そうだね。通り魔が出てこないといいけど。」


紅蓮

「警察が捜し回っている以上そうそう通り魔とか現われないでしょ。」


希子

「だといいんだけど。」


紅蓮

「むっ!?」


なんだ今の殺気は?


ここからかなり近い。


後ろか!?


後ろを振り向くと


例の通り魔が刀を構えて立っていた。


マジかよ。


黒い着物を着てドクロの仮面を付け使う武器は日本刀。


たぶん通り魔に間違いない。


通り魔が斬り掛かって来た。














…話にならないな…。 






僕は通り魔の斬撃を躱し、通り魔のみぞおち目がけて蹴りを入れる。



通り魔

「クバッ!?」


通り魔は十メートルくらい吹っ飛ぶ。


この通り魔、話にならないくらい弱いな。


紅蓮「やれやれ。コイツが噂の通り魔かよ。弱過ぎだ。」


僕は特殊な金属製のシャーペンを取り出した。


この特殊な金属製のシャーペンは僕が国の裏側にいた時によく使っていた物でとても丈夫。象が踏み潰しても壊れない優れ物。


希子

「紅蓮!」


紅蓮

「大丈夫です、姉さん。姉さん少し離れててください。」


希子

「わかった。気をつけてね。」


紅蓮

「了解。」


まー、この程度の相手なら怪我もしないだろうけどな。


通り魔

「貴様何者だ?」


紅蓮

「僕はただの学生だよ。君こそ何者?」


通り魔

「最近、通り魔をしている者だ。」


紅蓮

「そうかい。仕方ない面倒だけどここで捕まってもらうよ。」


僕はシャーペンを構える。


通り魔

「我が剣をそのような物で防げると思うなよ。小僧。」


そのような物って失礼しちゃうな。


このシャーペン1本数百万くらいはする代物なんだけど。


通り魔がまた斬り掛かって来たが僕はシャーペンで防いだ。


通り魔

「なっ!?なんだと!?バカな!?」


紅蓮

「驚いたかい?コイツは特殊な金属製のシャーペンで普通のシャーペンより遥かに丈夫に出来ているんだよ。そりゃ!!」


通り魔

「グバッ!?」


僕は通り魔を蹴り飛ばした。


紅蓮

「僕からの特別アドバイス。自分が殺そうと思っている相手の使う物はなんであれ警戒するべきだね。」


通り魔

(コイツ!?俺の剣を見切っているだと!?それだけじゃない!!なんだ!?あの硬いシャーペンは!?)


紅蓮

「まだまだ行くよ。」


通り魔

(力も技術も俺より上か!?ならコレならどうだ!?)


通り魔の姿が消えた。


透過系統の能力者か?


だけど殺気である程度の距離はわかる。


通り魔の気配がある方に…


紅蓮

「てい!!」


蹴を入れる。


通り魔

「グバッ!?!?」


ヒット!!


紅蓮

「姿をうまく消しても殺気が漏れすぎ。」


通り魔

「クックッ。」


紅蓮

「む?」


通り魔

「はーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!」


紅蓮

「む?」


どうしたんだ?


いきなり笑いだしたが?


通り魔

「いいね!いいね!久々の歯ごたえのある相手だ!!俺の剣の力を解放する時のようだな!!認めてやる!!小僧!!貴様は強い!!」


いやいや、あなたが弱過ぎるだけだからな。


てか…


紅蓮

「その刀剣。やはり妖刀の類か。」


刀剣からまがまがしい感じを感じてたけどやっぱり妖刀の類か。


通り魔

「『毒虫剣どくむしけん』。」


通り魔の刀剣の刀身が紫色に染まる。


『毒虫剣』、ありとあらゆる様々な毒を繰り出し操る妖刀。しかも破壊されてもしばらくすると自動修復される妖刀。


『毒虫剣』を持った相手と戦った事はあるがあいつの妖刀じゃないはずだが…


いや、考えるのは後にしよう。


紅蓮

「やれやれ。妖刀使い相手に今の装備じゃ厳しいな。やむを得ないな。ちょいと力を使うかな。」


僕が能力を解放しよう。


相手が能力者だし、何より『毒虫剣』で切られるのはまずいしな。


そう思っていたその時…


騎士

「僕の友達に手を出すなあああああああああぁぁーーー!!!!!!!」


希子

「!?」


通り魔

「ん?」


紅蓮

「!?」


騎士が現われた。


戦いに集中し過ぎて気が付かなかった。


僕としたことが不覚だった。


騎士

「うぉおおおおーーー!!!!!!」


騎士が通り魔に殴り掛かる。


通り魔

「邪魔だ!!クソガキ!!」


騎士は通り魔に腹を蹴られて吹っ飛ぶ。


騎士

「グハッ!?」


騎士は白目を向いて気絶した。


通り魔

「雑魚が!!俺の戦いの邪魔をしやがって!!死んで詫びろぉおお!!!!」


通り魔は騎士に斬り掛かる!!


あのまま騎士を斬らしたら騎士のいつも一緒にいる女子が何て言うか分からないし、それに姉さんが大量の血を見てそれがトラウマにならないとも限らない。


守るしかねぇか。


チクショウ。


僕の速さで間に合うか?


紅蓮

「能力解放。『冷風』。」


能力を解放して、冷風をまとい僕自身の速さを加速させる。


間に合えよ!


チクショウが!!


























結果


騎士は無傷だった。






が僕は右腕を切り落とされてしまった。


右肩から大量の血が出る。


チッ…


…結局、大量の血を姉さんに見せる事になっちまった…。


希子

「紅蓮!!」


姉さんが駆け寄る。


紅蓮

「ごめん。姉さん。見苦しいモノを見せちゃって。」


希子

「紅蓮!!腕が!!」


姉さんが泣きながら心配する。


紅蓮

「大丈夫だよ。姉さん心配し過ぎだよ。ちょっと思ったより出血しただけだかは。」


本当は大丈夫なんかじゃない。


激痛で気絶しそうになり、頭がクラクラするし、何より気分が悪い。吐きそうもなる。


おそらく、『毒虫剣』の毒と影響と出血の所為だろう。


通り魔

「大丈夫なワケねぇだろう。妖刀『毒虫剣』に斬られて大丈夫なワケねぇだろうが。教えてやるよ!!妖刀『毒虫剣』の能力は『毒』だ!!!!ありとあらゆる『毒』で斬った相手を毒殺する妖刀だ!!!!この紫色の刃に斬られて無事でいられるわけねぇよ!!!!普通の奴なら即死だが!!よく耐えてるいられな!!!」


あー、まったく、人が自分の姉に心配させないと頑張っているのにベラベラ話しやがってムカつくな。


紅蓮

「…せぇな。」


通り魔

「アァ?何か言ったか?」


紅蓮

「ごちゃごちゃうるせぇな!!」


僕は通り魔を殴り掛かる。


通り魔は毒の妖刀で僕の拳を防ぐが、僕は毒の妖刀を拳で砕いた。


通り魔

「なっ!?ば、バカな!?妖刀を素手で砕きやがっただと!?」


僕は血を吐きながら通り魔に蹴りを入れる。


通り魔

「グバッ!?」


通り魔は吹っ飛ぶ。


毒の所為か頭がクラクラするし、ガンガンする。


右肩から大量の血が止まらなくて貧血になっていく。


だけど…


ここで死ぬワケにはいかない。


まだ敵を倒してない。


今、ここで僕が倒れ、死んだら確実に姉さんは狙われる。


だから死ぬワケにはいかない。


僕は死に物狂いで拳を構える。


通り魔

「バカな!?通常の人間なら即死する猛毒だぞ!!それを耐えて俺に攻撃してきただと!?!?しかも拳で妖刀を破壊しただと!?!?貴様一体何者だ!?!?」


紅蓮

「僕が何者かなんてどうでもいい。」


僕は通り魔に殴り掛かる。


通り魔は僕の拳を躱すが僕はシャーペン投げ付ける。


そしてそのシャーペンは通り魔の腹に刺さる。


通り魔

「グッ!?なかなかやるな。だが興が醒めた。また別の機会に戦おう。」


通り魔は姿を消して去っていった。


気配はもう感じない。


どうやら通り魔は去ったようだな。


あぁ、もうダメ、限界だ。


僕は力尽き倒れて意識を手放した。

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