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「なっちゃ〜ん! 花火やろーっ」
テラスの横にある広い庭から、テンションの高い真悟の声が聞こえてくる。
「なつき! おじさんも、一緒に見るって」
縁側から出てくる祐也の手のひらには、おじさんが小鳥のようにとまっている。
「わっ、いいね、いいねーっ! せーや、行こっ」
“おーっ”
2人は、急いで庭に降りた。
「気を付けるんだよ〜」
縁側から見守る祖母の目に、おじさんは映っていないようだ。
「見て見て、俺のすげーっ!」
おじさんを肩に乗せて、祐也は花火で大きな円を描き始めた。
『オーッ! 綺麗ダネ〜』
火の粉と煙を警戒しながら、おじさんは瞳をキラキラと輝かせている。
「私の方が、すごくない!」
負けず嫌いの夏祈が、もっと大きな円を描く。
「ちょっと、俺が見てみる!」
真悟が少し離れたところから、色とりどりの火を散らす2人の花火を見比べている。
「う〜ん。ゆうやの勝ちだな」
わかりやすいほど、真悟は祐也びいきだ。
「もーっ! しんご、可愛くなーいっ」
2人が仲良くなり過ぎて、夏祈は微妙におもしろくない。
「まぁまぁ、みんな凄いよ〜」
祖母の一言で、とりあえずその場の空気は穏やかになった。
“プッ……、同じようなもんじゃん”
夏祈の隣りで、聖也も楽しそうに笑っている。
(なんか……、せーやが笑うと嬉しい……。なんでだろう? なんか、よくわかんないけど……。ずっとここで、みんなと暮らしたいな。ずっと、せーやと一緒に……)
嬉しいとか、悲しいとか、深く感じることのなかった夏祈の心……。確かに、何かが少しずつ、変わり始めていた。
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