18

 病院の外に出ると、雨は勢いを増していた。


「うわぁ、凄い雨! これじゃあ、 傘があっても濡れちゃうわね……」


 薬の袋を大事そうにバックにしまい込み、母親が憂うつそうに空を見上げている。


「あっ、ママ、あそこに入ろうよ」


 2人は雨宿りをしようと、近くのカフェに飛び込んだ。


「ねぇ、夏祈! 今年の夏休みは、おばあちゃんのところにでも遊びに行ってきたら?」


 アイスコーヒーにミルクを入れながら、母親が無理に笑顔を作っている。


「えっ、いいの?」


 大きな瞳をいっぱいに輝かせ、口の中にある氷をガリガリと噛み砕く夏祈。


 祖母は、南国の小さな島に住んでいる……。幼い頃は、夏祈もよく遊びに行っていた。

 母親が仕事に復帰してからはすっかり遠のいてしまったが、時々、南の風の香りがする贈り物が届けられてくる。

 夏祈は、祖母とその島が大好きだ。


「少し環境を変えてみるのもいいんじゃないかって、石井先生もおっしゃってたし……。おばあちゃんちでゆっくりしてきたら、病気も治るんじゃないかしら」


「うんうん、絶対治ると思う! やった、やった、やったぁ♪ あっ、そうだ、ゆーやも連れてっていい?」


「祐也君? そうね、祐也君にもいいかもしれない……。明日にでも、聖也君のおばあちゃんに電話してみるわ」


「うん! 飛行機の座席はビジネスにしてね」


「はいはい」


「それから、それから……、えっと、何から準備すればいいんだっけ」


 入り口の自動ドアが開き、女子高生が5、6人入ってきた。

 学校を欠席していることを思いだし、慌てて席を立つ2人。


 空は少し明るくなり、雨も小降りになっていた。

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