第38話

 俺は走った。

 無我夢中で走った。

 

「間に合えぇぇーーーー!」


 そう、光がここで死のうとしていた。

 絶対におれなんかのせいで死なせない!

 遂に光が右手で包丁を持った。

 そしてその包丁を首に当てた。

 

 そして俺が間に合ったときには光の綺麗な首から一筋の赤い血が流れていた。


 でも、そんな事知らない。 

 俺は光を抱き締めた。


「馬鹿野郎! なんで死のうとしてんだよ!

俺が光を要らない? そんな事無いだろ! 俺はな、お前の事要らないと思った事は一度も無いしこれからも思わない!」


 ここで俺の心の底から思ってる光の事全てを吐き出してやる!  


「俺は光が欲しい! いや、でも要らない!

矛盾してる? 知らねぇよそんなもん!」


「俺は光の笑顔が欲しい!そしてそんな悲しそうな顔は要らないんだ!」 


 そう、もう俺は逃げる事をやめた。

 だってこんなにも俺に好意を持ってくれてる人が居るんだから。


「だから光! もう死のうとすんな! 生きろ! 俺には光が必要だ。」


 目から水が溢れてきた。

 泣いてるのか? 

 俺には光が居なくなるのが怖いのか?


 そんな事はどうでもいい。

 光が生きてくれればいい。


 俺は初めてこんな事思ったかも知れないな。


 そんな初めてをくれた光の事、俺は...















『改めて好きになっちゃったかも知れない。』


 

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