第20話

「櫛田さん、本当に櫛田さんはそれで良いのか?」


「何が良いのかな?」


「それは、櫛田さんは本当に俺の事が好きなのか?それとも愛してる(好きな)のか?どっちだ?」


「...かんないよ。」


櫛田さんが発した声が小さくて、聞き取れなかった。


「私の気持ちは私自身でも分かんないよ!? でも伊吹君が私をこうしたんだよ!? それならちゃんと責任取ってよ!?」


櫛田さんは泣きながら自分の心を吐き出した。


確かに言われてみればそうだ。

俺が無責任な事をして、櫛田さんをこんなんにしたんだ...


ここで突き放すか?

突き放すと、最悪の場合櫛田さんは死んでしまうかも知れない。

取り敢えず一つ一つ丁寧に言葉を重ねるしか無いな。


「責任を取るか取らないかの問題では無いんだ。」


「なんで!?責任を取るだけで終わる話でしょ!?なんで否定するの!? 私の事がそんなに嫌いなの!?」


ここで、本音を言うか?

いやでもここで何を言っても未来は変わらない。

取り敢えずこの場を凌ぐ為にやるべき行動をしよう。


「櫛田さんの事は嫌いじゃ無いし、愛(好き)でも無いよ。俺の好きは好きだよ。」


「どう言う事?」


櫛田さんはすっかり泣き止んで俺の言葉を待っている。


「友達としての『好き』だよ。」


我ながら清々しく言ったと思う。


「そっか...そうなんだ...」


「そうなんだよ...」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る