2019年6月19日『照れ隠し』
学校を休んでも部室へは行った方がいいのではと学生としては本末転倒なことを思うほどに慣れ親しんだ文芸部室ではあるのだが、そんな俺にしたって今日は行きたくねぇなあと憂鬱に思うことがないこともない。理由はいくつかあるのだが、例えば今日のような日もその一つだ。俺はノックをしてから部室へと入る。部室ではすでに長門が本を読んでおり、「やぁ」といつもの調子で優男が声をかけてくる。俺はやれやれとため息で返事をした。
「涼宮さんとはご一緒ではないのですね。また掃除当番ですか?」
嫌味かと悪態をつきつつ、またこの流れかと辟易する。ようは、ハルヒと喧嘩中であり、部室に来るとまあハルヒのメンタルヘルスケア担当が話を聞いてくるということだ。俺のメンタルヘルスは誰がやってくれるのだろうか。ぜひ朝比奈さんに担当していただきたいね。
「まあ僕としては、あなたでさえもままならないような事態であっても、他の誰かがやるより遥かにうまくいっていると思ってはいますけどね」
褒められているのかどうか微妙な感じの物言いだな。まあハルヒが不機嫌になるたびに古泉のお仲間がスクランブル発進しているのかと思うと要らん罪悪感のようなもの感じるような気がしなくもない。とはいえ。
「俺は正直に言っただけなんだがなぁ…」
『という感じで彼から話を聞きだしていますが、このパターンはだいたい惚気話というか、単純に涼宮さんが照れていてぶっきらぼうになっているだけなんですよね』
「はー、古泉さんも大変ですねぇ」
あたしからするとやっぱり古泉さんは大変そうにみえる。けれど、古泉さんはこういう話をとても楽しそうに電話で話すのだ。どこまでが古泉さんの本心なのか分からないのですけれど。
「佐々木さんの方は相変わらず安定しています。もっとも、あたしたちは古泉さんのところみたいに四六時中観察しているわけではなくて、あたしがプライベートな友達として聞いているだけですが」
『いや、僕にはその方が羨ましいですね。理想的な関係と言える。僕もいつかそのような関係になれるといいのですけどね』
最後まで謙虚に、古泉さんは電話を切った。古泉さんの言うそのような関係とは、どちらを指すのだろうとちょっと考えてしまったけど、あたしも明日から頑張ります。
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