第8話
「わたし、気付いたんですよ」
なぜか私と【それ】は私の部屋で、これから一局始めましょうかと言わんばかりの間合いで対面しているのであった。だって仕方ないじゃないか。おしとやかそうな顔をしているのにずけずけと押し入りながら「あなたのお部屋はどこですか?」だもんね。
「何に気付いたのでしょうか」
「わたしは実はあなただったのではないか、ということにですよ」
「意味が分からないよ」
理解したくもない。
「だってあなたとお話をしている内にあなたのことをよく知るようになって、そうしたら『あれ?もしかして今一番自信をもってなれるのってあなたなのでは』って思えてきたんですよ」
「お願い。前言っていたことと支離滅裂になってることに気付いて」
「だから約束していたから悪いと思いながらも、試しにあなたの姿になってみたんですよ」
そう言って部屋のベッドから掛け布団を掴んですっぽりと頭の上から被った。そんなに変身している姿は見られたくないのだろうか。秘密戦隊か何かか。
いやそんなことより、私は間違っていた。興味があるとかないとか、話しかけてみようとかその前に確認すべきだったのだ。
――――あなたは何者だ、と。
「そうしたら、ほら」
手遅れだった。何もかもが。
布団を拭い去った後から出てきたのは、【それ】でもあり、私だった。いや、正確に言えば私になった【それ】だった。
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