2-2
彼女は居間の真ん中にある古びたちゃぶ台の前にちょこんと座った。
僕は冷蔵庫からペットボトルに入った麦茶を取り出し、ほとんど使っていないきれいなコップを小さい食器棚から取り出した。
彼女は静かに前を向いて、何かを考えているのかほとんど身体を動かさず待ってくれている。
そして僕はお茶を彼女のまえに出してから僕もちゃぶ台をまたいでまえに座った。
「麦茶ですけどよかったら。」
お茶を出す前に何がいいか聞けばよかったと後悔したが彼女はいえ、ありがとうございますと微笑んで少しそれを飲んだ。
彼女の喉元がゴクンと動く。
「それで亮一のことですが、彼の仕事場には行ったりしましたか?」
僕は彼の事をどれだけ知っているのかを聞いてみることにした。
「実は、亮は仕事の話だけはまったく昔からしてくれなくて、なにを今しているのかも知らないんです。たまに電話をかけても忙しいと言われるばかりでしたし…。」
息も吸わずに吐き出すように話した彼女の表情は真剣だった。
首を軽く前後に動かして息を整えている。
僕は彼女がなぜあのような男を兄弟だとしても、それほどまでに想っているのかが不思議でならなかった。
あの男はたしかになにか惹かれるものを持っている。
だが彼はその彼の生によって生み出される
だがその妹は悪魔とは正反対の愛の中で育ってきたような、純情な感情の持ち主で、光の中を歩いている、そんな女性だと感じた。
「宮藤さんは亮の今の仕事場を知っていますか?」
僕は彼女に本当のことを打ち明けたいとも思ったが、こんな綺麗な女性に悪魔の死体なんて見せてはいけないと思った。
「いえ、仕事場までは知りませんね。警察に捜索願を出されてはどうですか?」
僕は誰でも応えそうな普通の言葉をかけ、話に終止符をうった。
「そうですよね、分かりました。警察に行ってみますね。ありがとうございました。」
そう言ってその女性は立った。僕は玄関まで付いていった。
「あ、今更ですけど私、蘭
そう言って彼女の電話番号とメールアドレスが書かれた小さい紙を受け取った。
「分かりました。では、またなにか分かったら連絡しますね。」
そう言って歩いて帰っていく彼女の後姿を後ろから見守った。
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