第7話気持ちのヘンカ

それからもずっと充の束縛は続いた。


何処に・・・誰と・・・何時に帰る・・・


-面倒臭い・・・


当時は現在の様に携帯電話が普及していなかった為、連絡手段がなく、

家に帰ると「充くんから5分置きに電話あったよ。ちゃんと帰るって言った時間に帰って来てくれないと。」と、母からよく小言を言われたものだった。


そんな日々が続くと、その束縛から逃げ出したくなる・・・

私の充への気持ちが以前のように『好き』が勝っていたなら、私の性格なら大喧嘩してでもこの状況を打破しようとしたんだろうけど、現段階ではそんな気力もなく、充との関係は崩さず、とにかく逃げ場を求めた。


だからよく、美穂ちゃんや隆哉に愚痴をきいてもらっていた。

バイト終わりに私の家に寄ったり、近くのファミレスで、時々慎ちゃんや絵里さんも加わり朝まで色んな話をした。

無茶苦茶な経営者一族と従業員組合みたいな?そんなカタチがこの頃できた。

今思えば、その頃可哀想だったのは遥人くんだ。私達従業員組合からはあっちサイドの人。と見られていたので組合の寄合には参加させてもらえなかったし、かといって経営者一族という訳でもなく、どちらにも行き場がない状態だった。まー、本人に確認したわけではないが、遥人くんの性格ならどちらとも関わりたくなかったかもしれない。


そう過ごしていく中で私に大きな変化が生まれた。


みんながそうとは言いきれないけど、

『好き』な食べ物って食べ過ぎるとイヤになる事があるけど、『嫌い』だと思っていた食べ物の美味しさに気付いた時その食べ物が『大好き』な食べ物になる。


その感覚。


私は隆哉をなんでも話せる友達として『大好き』になっていた。

イヤ・・・もしかしたらこの頃からもう異性として惹かれ始めていたのかもしれない。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る