第4話充と隆哉とアタシ

楽しかった夏休みも終わってしまった。

充と隆哉はまだひと月ほど夏休みが続くらしい。羨ましいかぎりだ。

悟くんと慎ちゃんは受験生だったので

本格的に受験勉強にとりかかるという理由で

たまにしかバイトに来なくなってしまった。


新しいバイトに短大生の絵里さんと

オーナーの愛人の息子の遥人君が加わり

新体制となった。


絵里さんはとてもキレイで大人な女性だった

オーナーの愛人の息子という立場を聞くだけで「???」な存在の遥人君だったが、

充や悟くんは以前から交流があった様で

ギクシャクした空気感もなかったし

二人とも年齢が近いこともあって

すぐに仲良くなれた。


その頃隆哉は貯めたバイト代と貰っていた奨学金で中古車を購入した。

まだ免許のない充は頻繁に隆哉を誘いだしては私を学校まで迎えに来てくれた。

だから、自然と三人で行動する事が増えた。


「温子ぉー!」


-恥ずい・・・みんな見てるし・・・


友達に別れを告げ、慌てて車に乗り込む。


「隆哉さん、いつもすみません。申し訳ない です。」


「いや、俺が車乗りたいだけだし。」


-まただ。


隆哉はいつでもこんな物言いをするけど

充のワガママや私のお願い事も

なんだかんだでイヤな顔もせず受け入れてくれる。


この不器用な優しさに気付いてから

大嫌いだった冷たい彼氏の友達が

気になるクールでツンデレなアタシの友達になっていた。


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