2話 陽を失い見える世界


[1話から少し経過している]


 人々が唯一神と崇める光〝よう〟は、太古の時代に存在した太陽の生まれ変わりと語り継がれている。


 闇深き世界で生き延びるため、魔物を導くと決めた少年は、対立しうる人間を仮想敵にして、紫炎しえん(紫の火)を旗印に魔物を集めた。

 一本の線となり天へ延びる紫炎を目にした魔物は、旗印に導かれ歩み始めた。


 統率力がなかった魔物が一か所に集まる動きに違和感や危機感を抱いた人々は、陽の化身をもって紫炎へ向かいながら、遭遇した魔物を討伐し始めた。


 紫炎の下へ集まった魔物たちが、ある方向から目を背け、身体を震わせて脅える様子を目にした少年は、幾つかの紫炎が見つからず、何事か――と警戒していると、木々の隙間から逃げるように魔物が現れた。


[別の場所や視点&少し時間が戻ります]


 拠点を隠すため、配置されてた紫炎が灯る松明は、陽光に照らされ、かき消された影響で幻影の力は弱まり、松明に灯る紫炎は次々と消されていった。

 紫炎を頼り集まる魔物は、頼る光を消し去る光が己の味方となりえない存在だ――と気付いている。

 陽の光は弱い紫の灯をかき消し、導きの光を失った魔物たちは、道が見えず迷った末に不安を抱き恐怖する。

 恐怖から逃れるため、天へ延びる紫炎へ向かい必死な思いで走る魔物たちは、背後から感じる殺気に脅えながら走り続ける。

 背中へ向かい放たれた矢に射抜かれた同族の悲鳴を聞きながら、生き延びるために振り向かず、仲間を見捨てて走り続ける。

 木々をかき分け、開けた広場に出た魔物たちは天へ延びる紫炎に助けを求めた。


 負傷し歩くこともままならない魔物は迫る光に脅え、腕を必死に動かして這いつくばりながら逃走を試みるも、死を告げる足音が徐々に大きくなる。

 音が止み、抱いた不安を払拭したい魔物は、脅えながら腕を支えに身体をねじると、目前へ剣先を向ける、にやけ顔の男(人間)の背後から強く眩しい光が放たれていた。


 魔物が生を望み懇願しようとも人間を守る陽は魔物を救わない――魔物がである限りは……。


[視点変更]


 木々を抜けた人々の長が持つ神様の化身から放たれる十数メートルを照らす強い光は魔物を脅えさせる。

 脅える様子を見て、大いに笑う人々は、魔物に囲まれた紫色の目を持つ少年を見つけた。

 

 魔物と行動を共にする人間など、聞いたこともない人々は、魔物に捕まったのか――と思い呼んだが、動く気配はなかった。

 魔物を恐れているのか? と考え、神様の光があれば脆弱な魔物など物の数にも入らない――と来るように促したが、動かない様子を見た人々から、一人の男が魔物をかき分けて、少年の下へ向かい始めた。


 邪魔をする様に道を遮る邪魔な魔物を蹴散らす様子を見せられた少年から、やめろ――と叫ばれた男は立ち止まり、魔物は動物ではないんだ、憐れむ必要なんてない――と告げ、歩みを進めた。


[視点変更]


 人間が魔物を殺すことは当たり前だが、神の光を失い、紫の光に導かれ、魔物と暮らし始めた少年は、以前のように、魔物だから――と魔物を虐げることは出来ず、非道な男に嫌悪感を抱いた。


 天へ延びる紫炎から灯された紫の炎が激しく燃え上がる松明を手に持った魔物から、槍のように放たれた松明は、男の胸元へ向かう最中、灯す紫炎が鋭く尖り、槍の穂先が形成された。

 紫炎の槍に気付いた男が後ろに飛ぶと、紫炎の鉾先が柔らかに揺らめく炎に戻った。


 目の前で起こった現象に驚く少年は男から、脆弱な紫炎程度が神様の光に敵うはずがない――と紫炎を侮辱され、神様の光は紫炎をかき消すんだ――と説明を聞かされた。

 男が拾い手に持っている松明で燃え盛る紫炎が見える少年は、落胆する魔物たちや、自慢げに語った人々が異常に見えた。

 少年には神の光が見えていないから――。


 神の光でかき消されて魔物が放った紫炎はと思った事で紫炎の形が崩れて元に戻った――なら、神の光が見えず、紫炎がはっきりと見える自分なら、と考えた少年は天へ延びる紫炎の下へ向かい、篝火の薪(紫炎が灯っている)に触れた。


 天へ延びる紫炎は形を変え、少年を導いた。


[視点変更]


 更に形を変えた紫炎が、大きな塊となって迫るも、神の光でかき消せる――と確信する男は動かなかった。

 男の予想通り、かき消された紫炎は見えなくなったが、身体は冷気に包まれた。

 身体の熱を奪われて凍結した男は意識を失った。


[視点変更]


 仲間を凍らされ、激動した女から切りかかられそうだったが、冷静な他の仲間に制止されていた。

 運ぶ余裕がない男を放置し、撤退した人々を見届けた少年は、残された冷凍男の対処に困り、陽光が去って元気になった魔物たちに一任した。




【色々な設定】


 弱い紫炎は幻影となり、強い紫炎は具現化する感じ。


 陽光は強くて、他の光をかき消すが、陽光が見えない少年は、かき消されず紫炎を見ることが出来る。


 見えるから紫炎を制御できて、紫炎が熱を奪ったから、男は凍った。


 魔物は陽光が見えるから紫炎がかき消されて、途中から紫炎が見えず制御しきれなかった。


 少年は男を殺す気はなくと望み、紫炎に導かれたが、無力化したい――を叶える手段〝凍結〟を示した。

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