第2話 encounter
第2話 encounter(1)
今日は目覚ましのアラームよりも早く目が覚めた。頭も大事なものが全部抜け落ちているんではないか、というぐらいすっきりしている。昨日は酒を飲まなかったせい…おかげなのかな。
今日は練習試合の日だ、といっても時間は夜なので日中は大学に行かなければならないんだけれど…昨日は散々だったが帰り道は何事もなく帰ることができてほっとした。しばらくぼーっとしてから朝の支度を済ませ家を出た。午前の講義を受け終えて、お昼の時間になった時、後ろから肩をたたかれた。
「よっ!」
「あ、
声をかけてきたのは顔立ちの整った爽やかな青年だった、顔の線は細く、まるで猫を思わせる大きな猫目が特徴である。彼の名前は
「今日の練習試合、頑張ろうな!お互いこのチャンスをものにしよう!」
すごいニコニコとした表情で前に2つグ―を作って張り切っていた。僕が少し驚いていると急に隼人に腕を掴まれた。
「えっ!?」
「でも、その前に腹ごしらえだ!」と言って、僕を食堂まで連行していった。まぁいいいけどね?僕もご飯食べるつもりだったから…この子はやっぱり少しアホで残念なイケメンだ。
その後、無事午後の講義を終えて、しばらくすると練習試合の時間となった。集合場所にはいつも通り人が集まっていたが、レギュラー陣の何人かはオフだという事もあり顔を出してはいなかった。そこには剛大も含まれていて予想通り来てはいなかった。
「集合!」とキャプテンの掛け声でみんながいつものように円になっていく。レギュラー陣でもキャプテンと輝さんの二人は来ていた。
「おはようございます、さて練習試合ですが今回の相手をまだ発表していませんでした。今回、現在レギュラーとなっている人たちをオフにしたのには理由があります、さっき言った今日の対戦相手と関係があるのですが、今日は『ブラックバッツ』との試合になります」
「「「はぁ!?」」」
全員の素っ頓狂な叫び声が重なった。
「まぁ落ち着いて、今回あちらから提案されたんだが、別に断る理由もなかったので承諾した。だけど大会が控えてる今の時期にベストメンバーを出してわざわざ敵に情報を送る利点はないからな。」
淡々とキャプテンは説明しているがこれは驚愕的なことだった。チーム『ブラックバッツ』とは毎年僕たちと同じく強豪と言われ、去年の大会では決勝で僕たちを破って優勝したチームでもある。そんな相手とこの時期に練習試合なんて考える方がおかしい。
「なので、今回の練習試合はレギュラー陣ではない者たちで戦い自分たちはその状況を見て大会中に使える者がいれば昇格させるつもりなので張り切って戦ってきてほしい、そして去年のリベンジを果たして来い!」
「「「おう!」」」
戸惑いもありながら僕たちの気合の声には力がこもっていた。そして次に今回のセットが発表された。僕は今回1セット目に選ばれた。つまり先発だ。指名された瞬間、気分は一気に高揚した。
解散した後も高揚した気分は変わらず気分よく鼻唄を歌いながら手洗い場を出ると曲がり角から出てきた人と衝突した。
「わっ!」
驚いて素っ頓狂な声が出てしまったが、相手はぶつかった衝撃で倒れそうになってしまい、とっさに手を引っ張った。
「あ、ありがとうございま…す…」
尻すぼみになったお礼の言葉を聞いた瞬間にその声に聞き覚えのあった僕は顔を彼女の方に向けた。大きな瞳が僕を上目遣いに見ていてドキッとしたが、更にこの人の正体が分かった瞬間、心臓がバクバクし始めた、落ちついて!僕の鼓動!
彼女は昨日の携帯の女性だった!そしてお互いが声を出せずお互い固まっていると遠くの方から隼人の声が聞こえた。
「お~い、もうすぐセットミーティング始めるぞ…」
そしてなぜか隼人もこちらを見るなり絶句した。なんだ?
「ひょ、ひょ…」
「「?」」
「氷太が女を連れて来てるぅぅぅ!?」
「はぁ!?」
隼人が意味不明な叫び声を上げた為こちらも動揺してしまったが、よく自分を見直したら理解できた。なぜなら今僕は、この女性と手を繋ぎ、彼女は僕が引っ張った衝撃で僕がまるで抱き込んでいるかのように懐に入りこんでいた。
あれ?結構近くない??慌てて手を離すと彼女も少し距離を取るように離れた。何もしないですよ?
「待って、落ちついて」
「これが落ちついていられるか!お前彼女いたのかよ!」
「違うよ!話聞いてってば」
この残念なイケメンが騒ぎまくるので周りの人もこちらに注目している。これはまずい!
「ごめんなさい、ちょっとこっちに」
「えっ?」
少し乱暴だが彼女の腕を引っ張って騒ぎの中心から脱出する、後ろで隼人がまだ何か言っていたが追ってくる気配はなかった。後ろを向いた際に彼女の顔が見えたがなぜか笑っていた。
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