さらばパイロン!?

 パイロンは親に捨てられるのを恐れて、どうにかしようとした。俺を頼って。自分でも何とかしようと駆け回った。


 それは、側にいた俺が一番よく知っている。


 しかし、ザイオンは全てを知っていたのだ。その上で、邪魔をしてきた。おそらく、古代竜を差し向けたのも、彼だろう。


「お主らは、私が差し向けた試練に見事打ち勝った。万魔殿も元通りになっておる。よって、この件は不問とする」


 大きく息を吐き、パイロンが膝から崩れ落ちた。


 俺は、パイロンの肩に手を置く。ようやく、パイロンは解放されたのだ。


「して、冷泉爽慈郎とやら。仕事は終わったわけだな?」


「ああ。あんたが帰ってくるタイミングで、丁度終わらせることができたよ」


「左様か。ならば、お主はもう用がないというわけだな。命までは取らんから、早々に立ち去るが良い」


 なるほど。俺は用済みってワケか。


「わかった。出て行けばいいんだな? 了解だ。じゃあな」

 俺はスポーツバッグを担ぐ。


「待って待って!」

 去ろうとする俺に、パイロンが立ち塞がる。


「もう行っちゃうの? もっといてもいいのに」


「用は済んだ。だったら立ち去るのみだ」

 俺はパイロンの脇をすり抜け、歩を進めた。


 負けじと、パイロンがバッグの紐を引っ張る。

「でも、帰ったらもう会えないよ。パパは絶対、魔界と地球の行き来ができなくなるように細工して、二度と会わせてくれないよ。わたし、爽慈郎と離れたくない」


 だったら、それは好都合だ。


「俺のスポンサーになって金を出してくれるんだろ? 俺はお前からもらった金で起業する。お前は俺に金を出し続けてくれる」


 決して、縁が切れるわけじゃない。


「そんな問題じゃないもん! ずっとここにいればいいじゃん!」


「俺には学校がある。向こうの生活だってある」


 掃除も完了して、片付けは済んだ。本当に、俺がここにいるべき理由はない。


「でも、急すぎるよ。爽慈郎がこの屋敷に残れるように、なんとかするから」


「また部屋を散らかすつもりか?」


 うっ、と、パイロンが言葉を詰まらせた。


「これ以上俺が手伝ってたら、お前が甘えてしまう。俺が帰った方が、お前のためになるんだ」


 何とか俺の滞在を諦めてもらおうと、パイロンを説得する。


 だが、パイロンの意思は堅く、オレの手を引いて離さない。


「止めるな。もういいんだ。お前と過ごした時間は楽しかった。こんなに充実したことはない」


「やだ。わたしも地球に住む!」


「よせ、親を困らせるな」

 付いてこようとするパイロンを押しのけた。

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