お菓子たちの墓標

 俺は、スポンジケーキのタワーをテーブルに置いた。


 スポンジの間には生クリームを挟んである。魔力を回復させる成分が含まれているのだ。


「これがお前達の標的だ。これにチョコをまき散らせ。より多く塗りつぶしたチームが勝ちだ」


「了解であります、サーッ!」


「最高のオモチャだろ? それで満足できないなら貴様達はクズだ。修羅と名乗るインチキ野郎だ、ギャルのプッシー味わう前に地獄へ落ちろ皮かぶり共!」


 俺が説明し終えると、一斉に菓子共が武装を始めた。


 腕を上げ、「では、試合開始!」と、上げた腕を降ろす。


 蜘蛛の子を散らすように、両陣営が散っていく。


 キノコとタケノコが、思い思いに銃を撃ち合う。時に相手を撃ち落とし、時に自分が撃ち落とされ。

 その度に兵士が菓子箱から補充され、死地へと向かう。


「キビキビ動け! 走り方をパパのタマタマに置いてきたのか!?」


 スポンジケーキが、チョコ菓子の残骸とドロドロのチョコでデコレーションされていく。ピンクのチョコがイチゴ味、青紫がブルーベリー味だ。


「おいそこサボるな腰抜け! 踏みつぶされたいのか!」


 動きの悪い奴らを叱り飛ばす。



 こいつらはただ暴れたいだけ。目一杯はしゃげば満足する。


 ただ、俺達の目的は厨房を片づけることだ。


 パイロンと相談した結果、妥協点が「ケーキのデコレーションを頼む」事だった。


「ピンクチームが優勢だ。ブルーベリーチーム、どんどん攻めろ攻めろ!」


「イエッサーッ!」

 ブルベリーチームが息を吹き返す。


「あと数秒だぞ。いけいけー」


 試合が終了した。結局、イチゴ味の優勢を止められず、ピンクが優勝となった。


「これにて作戦終了だ。全員帰投せよ!」


 俺は合図を送って、菓子共をテーブルの向こうへとダイブさせる。

 その先には、あらかじめ張り巡らされた蜘蛛の巣が。

 お菓子共は次々と、蜘蛛の巣へダイブしていった。


「今だアラクネ、全部食え!」

 蜘蛛の巣でひとまとめになったお菓子を、蜘蛛の怪物は一気に平らげる。


 菓子は、食われてこそ意味があるのだ。しかし、命を吹き込まれた物を食べるのは躊躇われた。そこで、アラクネに食べてもらう事にしたのだ。


 菓子オバケ達の処理が完了した。


「よし、ガイコツ軍団かかれ!」


 スケルトン作業員を厨房へと送り込む。

 あとはガイコツたちが、ここを片付けてくれるはずだ。


「それで、このケーキはどうしよっか?」

「一部はオレ達が食べる。あとはアラクネに食べてもらおう」

「コーヒー用意するね」


 また、パイロンがコーヒー牛乳を用意する。


「じゃ切るぞ」

「待って待って。二人で切ろうよ」


 ケーキをカットしようとしたら、パイロンが手を添えてきた。


「おいおい、ウェディングケーキじゃないんだぞ」

「えへへ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る