ブレイクタイム

 カットしたケーキを等分して、ブレイクタイムに。


「でも食べてる暇なんてあるのかな。こうしている間にもマーゴットやクヌギちゃんが」

「本当に休憩しないと行けないのはお前だぞ、パイロン」


 鎧を着ている俺には分かる。見た目に反して、パイロンが消耗しているのを。俺の鎧が教えてくれているのだ。


 なのに、こいつは強がって。


「休憩しよう、パイロン。ここから先は当分休みなしだからな」

「……ありがとう、爽慈郎。いただきます」


 観念したのか、パイロンが席に着く。甘い物を口に含むと、パイロンの表情にいつものユルさが戻ってくる。


 俺達が食っている間に、厨房の食器をスケルトン達に片づけてもらう。勝手知ったるなんとやらだ。あっという間に厨房は元に戻った。


「苺とブルーベリーだから、どうかなと思ってたんだが、どっちもチョコだな」

「だねえ。おいしいね」


 俺の倍以上食べて、ようやくパイロンは満足したようだ。魔力も戻っている。


 残ったケーキは、アラクネにおいしくいただいてもらう事にした。


 手つかずだった食器類を手当たり次第に片づけ、厨房の掃除は完了した。


「一通りのフロアは、これで片付いたな」


 あとは、魔力の源を探って真琴を助けるだけだ。


「確か、真琴が連れ去られたのって、この先だよな?」

「うん。そうなんだけど」


 俺の鎧に取り付けられたセンサーが、城の周り覆う魔力の発信先を示す。


「近いね」

「ああ。だが、アラクネにはもう一仕事してもらう」


 食事休憩を終えて、アラクネを外へ連れ出す。


 外では、相変わらずバラの触手達が蠢いていた。


 まだ、浄化されていないらしい。


 果敢にもスケルトンが立ち向かうも、返り討ちに遭っていた。


「アラクネ、お前の胃液も、瘴気に耐性があるようだ。バラにまとわりついた瘴気を浄化できるか? ある程度数を減らしてくれたらいい。後はスケルトンと共闘で片付けるから」


 アラクネが頷いた気がした。次の瞬間、蜘蛛が無数の糸を吐き出す。


 粘性のある糸に絡まれ、身動きが取れない。


 だが、アラクネは一匹だ。無数の触手の力には抵抗しきれないだろう。


 ここで、スケルトン共の出番だ。動きを止めた触手達に、薬剤散布器やスプレーで武装したガイコツ共が群がる。薬剤を振りまく。


 スプレーを散布された触手が小さくなり、もとのキレイな花へと戻る。


「これでよし。後は、真琴を連れ帰ってからにしよう」


 大活躍したアラクネを撫でる。


 日の光が苦手なのか、アラクネはまた屋敷の中へ。


「助かった。ゆっくり休んでくれ、アラクネ」


 俺の声に反応して、アラクネが前足を振る。


「あれ? ポケットに何か入れた?」

「よく聞いてくれた。冷蔵庫から拝借した」


 俺は、手に持っていた食材を見せた。


「次は武器庫だからな。ちょっと試したいことがある」


 パイロンは首をかしげたままだ。


「まあ、見てろって」

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