第六章 ダストバスターズ、反撃開始!

ミミックと再戦?

 部屋を出て早々待ち構えていたのは、静寂だった。


「そんな。マーゴットが……」

 パイロンが崩れ落ちる。


「マーゴットがいない。どこにも」

 廊下を這いずって、パイロンは親友を探す。


「大丈夫だ。あいつは死んでない。見ろ」


 ゾロゾロと湧いて出てきたのは、スケルトンだ。俺の掃除ノウハウを叩き込んで作られたガイコツ共は、俺達を探すかのように、エントランスをうろついている。


「奴らはまだ活動してる。つまり、真琴は無事ってわけだ」

 ならば助け出さないと。


 だが、俺はバケツを蹴飛ばしてしまう。


 ガイコツが俺達の気配に気づいたらしい。モップやハタキを構え、こちらに押し寄せる。


 さっそくこの鎧を試す機会が来た。相手は俺の分身だ。どこまで通用するか。


「爽慈郎。ガイコツのあちこちに、汚れや埃が付着してるのがわかる? 兜の耳部分に魔力探知機があるから、作動してみて。手を当てるだけで作動するから」


 パイロンの助言通り、鎧の耳部分に手を当てた。


 良好だった視界が、サーモグラフィのような映像に切り替わる。


 スケルトンの各部位に、埃、汚れがこびりついてた。それらは緑色に発光している。

 発光体は、アメーバのようにうねっていた。


「この緑色が、魔力だってのか?」


「そう。魔力源は兜で確認できるよ。つまり、汚れを落とせば動きを止めるかも」


 この汚れを探知して、キレイにしていけばいいようだ。


 ワイパーを構える。剣道などの武道の心得なんかない。素人の構えで挑む。だが、不思議と怖さは感じない。パイロンの作ってくれた装備を信じているからか。


 まず、一匹のスケルトンにハンガーを叩き込む。


 ホコリがハンガーにこびりついた。ヘドロのような、猫の毛玉のような、真っ黒いホコリに見えるが。


「コレが穢れか?」


 パイロンに確認を取る。


「そうだよ。それを除去してあげれば、元のガイコツに戻るから」


 アレが落ちたスケルトンが、おとなしくなった。俺が指示を出すと、廊下の掃除を始める。どうやら、穢れを取ると元に戻るのは本当らしいな。


 廊下一帯に、スケルトンの大群が。俺を探知すると、ワッと襲いかかってきた。


 両手に持ったストッキング付きハンガーヌンチャクで、ガイコツに付着した黒い汚れを落とす。


 そのたびに、スケルトンは正気に戻っていった。


「パイロン、ハンガーッ!」

「ほい!」


 予備のハンガーを、パイロンにありったけ放り投げてもらう。


 ハンガーを受け取ると、正常化したスケルトンに持たせた。


「こいつで仲間にこびりついた黒い汚れを落とせ!」


 俺からのミッションを受けたスケルトンが、悪墜ちスケルトンを迎え撃つ。


 再びスケルトンが元に戻っていった。またストッキングハンガーをもらっての繰り返し。


「くそ、ゾロゾロと」


 とはいえ、楽な仕事ではないようだ。スケルトンの集団が、こっちに向かってくる。


「まとめて掛かってこ――」


 ハンガーを構えて、俺は勢いよく跳びかかろうとした。


 その刹那、スケルトン達の上半身が一瞬にして消えてしまう。続いて下半身も。箱形の化け物によって、スケルトンが数体囓られたのである。


 そいつは以前に、防虫剤で追い払ったミミックだ。


「また会ったな」


 エントランスの床に着地した口型化け物は、ゲップをしてこちらを向く。


 ミミックは口元をニタリとさせ、俺達を待ち構えている。


「へへ、あの時はよくも、オレサマに変な物を食わせたな?」

 相手はやる気だ。


「パイロン、下がっていろ」

 俺は、魔力を付与されたモップを構える。


「あん時はすまなかったなぁ」

 ミミックはあり得ない発言をした。


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