第五章 新たなる戦い! ゴミ屋敷がリバウンド!?

地下の落書き

 掃除開始から一ヶ月目。四〇日もあった夏休みも、既に半ばを迎えていた。


 一〇万体に増えたスケルトン軍団のおかげで、まだ半月残して、魔王城も九割は片付いている。


 大規模フリマという大きいイベントも終了し、掃除も佳境に入っていた。


 クヌギの割烹着姿も、数日で板に付いてきている。


 一応、ダストバスターズは順調というべきだろう。ロゴもパイロンがデザインしたものに統一され、制服に新しく取り付けられた。


 目覚ましい変化が起きているのはパイロンだ。自分で積極的に片付けをこなしている。


 あと、残すところは地下だけ。ここにはひどい汚れが鎮座していて、どうしても俺自身が掃除しなければ気が済まなかった。


 地下室のもっとも深い部分。石造りの床に、もう使われていない玉座。そこに、特大の落書きが描かれていた。


 魔法文字だろうか?


 クヌギですら読めない文字で、規則正しく文字が連なっている。


 どんな洗剤を使っても、この落書きだけは落ちなかった。


 パイロンは真琴と共に、服や小物を処分する為ダンジョンへ行っている。


 二人がいない間に、掃除してびっくりさせてやろう。俺はそう考えていた。


「クヌギ、手伝ってくれるか?」


「任せろ、人の子よ。其に不可能はない」


「頼りにしてるぞ。クヌギ」


 クヌギが、光の剣を構える。


 魔力的な力が働いているなら、クヌギの力でどうにかなるだろう。俺はそう踏んでいる。


「ぬううん!」

 クヌギが、光の剣を石造りの床に突き刺す。


 落書きから緑色の光が迸り、稲妻が駆け巡った。


 もしかすると、とんでもない事をしてしまったか? と俺はたじろぐ。



 だが、それ以上何も起こらない。



 剣を納めたクヌギも、とくに警戒していない様子だ。


「これで問題なかろう」

 一仕事終えて、クヌギは袖で汗を拭く。


「二重三重に、魔法障壁が施されていた。よほど消してもらいたくなかったのだな」


 クヌギはそう言うが、俺には思い入れのある落書きには見えない。


 大事な落書きなら地下になんか書かないだろう。目立つ場所に堂々と書いているはず。


「悪いな、クヌギ。後は俺がやるから」

 かなり消耗していたのか、クヌギは床にへたり込んだ。

「それにしても、ここだけ魔力障壁が凄まじかったのう。解除に一苦労した」


 掃除を終えた俺は、クヌギの手を取って立ち上がらせた。

 俺が手を貸さないといけないくらいヘバッてるのか。


 「ただいまー」

 玄関から、パイロンの声が。


「今お茶を」

 無理をして、クヌギが立とうとする。


「お疲れのご様子ですね。私が代わりにご用意致します」

「かたじけない」


 ヘトヘトのクヌギに変わり、真琴がお茶を沸かす。


 外の天気がいい。今日は外でお茶をしようとなった。


「掃除ももうすぐ終わりそうだよね? なんか、何もかも順調で怖いよね」


「ああ、順調だ。地下室の落書きも消してやった」


「え」


 パイロンが、カップを落とす。

 同じように、真琴がお茶のセットを盛大にこかした。

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