イカ焼き大繁盛!
というわけで、俺は海パン姿で屋台の店番をしている。
イカ焼きの屋台には、デカいイカ焼き器がセットされていた。俺に迷惑を掛けたと思ったのか、パイロンが自腹で購入したのである。律儀なのかなんなのか。
「申し訳ございません爽慈郎様。お嬢様のワガママに付き合って下さって」
俺の隣で、真琴も客の対応をする。学校指定のスクール水着にエプロンという、実に背徳的なスタイルで。
それにしても、このブレスレットは万能過ぎる。
容姿切り替え機能付きだとか。相手には俺の姿がスケルトンに見えているという。言葉が通じない異種族が相手でも、お互いの言語が通じている。実際、接客に支障はない。
魔族の大半は相手が人間だと分かれば、取って食おうと襲ってくる。または舐めた態度でちょっかいをかけてくるらしい。その予防策だそうな。
相手からすれば、俺はさぞ横柄なスケルトンに見えているだろう。
猫耳の種族と、ナメクジの触覚が生えたハゲ族のカップルがイカ焼きをオーダーしてきた。
「毎度。イカ焼きは二〇〇円だ。缶ビールも二〇〇円」
列に並んでいる魔族達にイカ焼きを売り、銀貨を四枚もらう。
俺の脳内では、魔界の銀貨は日本の通貨単位相当に置き換えられている。
相手が出した紙幣や硬貨を見れば、脳内で日本の貨幣に置き換えられ、計算ができるのだ。
すべて、ブレスレットのおかげである。
相手も魔界の銀貨で支払いを済ます。確かに、魔界の硬貨で払っているから問題ない。
「デートで食うなら普通、クレープとかじゃないか? イカ焼きでいいのか疑問に思うが」
「そこは魔界のセンスだと思えばよいのです」
なるほどね。感性が地球とかけ離れてるのか。
一方、俺をここに連れてきた張本人は、マイクの前に立ってスピーチをしている。花柄のビキニに花柄パレオという控えめな出で立ちだ。白いスク水を着たクヌギを引き連れている。
だが、順調だったのは昼間の間だけだった。
フリマの運営も一通り終了した途端、客足が途絶え始める。
「ただいま。まだだいぶ残ってるね」
パイロンが、イカ焼きの売り場スペースへとやってきた。
「ビールは売れてるんだがな。急にピタッと誰も来なくなった」
思いの外、イカ焼きの生地が多すぎる。城一件分だったからな。いくら売れたとしてもタカが知れている。
味は確かなはずだ。何がいけないのか。
隣のタコス店なんか速攻で売り切れているのに。
「お昼過ぎだからね。お腹いっぱいなのかも」
なるほど、昼食を挟んだなら、イカ焼きは腹には辛いかも知れない。
「わかった。ちょっと待ってて」
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