第四章 社長失格!? 爽慈郎が本当にやりたいことって?
魔導ピザ
今日は一日じゅう、二人の姿を見ていない。
仕方なく、残ったクヌギと共に清掃活動。
クヌギの着ている藤色の着物は、パイロンのお下がりの浴衣だ。上に羽織っているのは、パイロンが小学校の時に使っていた割烹着である。
パイロンと真琴は、フリマの準備で忙しい。
俺も誘われたが、まだ掃除できていない場所も多く、時間もない。準備と言っても俺ができる仕事もないはず。結果、俺は城に残ることにした。
クヌギは外で、掃き掃除をしている。
まあ、イカ焼きの作り方は教えたから、本番当日は二人に任せて大丈夫だろう。
スケルトンに指示を送りつつ、自分でも玄関周りの掃除をしていたら、ドアベルが鳴った。
出ていいものかどうか悩んだが、とりあえず用件だけでも聞くか、と対応することに。
「まいどー。魔導ピザです」
現れたのは、丸々と太った短足の中年であった。服装はパリッとして、雷のようなカイゼルヒゲを携えている。オーバーオールが窮屈そうだ。
「頼んでないのだが?」
「あれー? 確かに魔王城ですよねぇ。おっかしいいなあ」
怪しいオッサンだ。けれど、害があるとは思えない。
「ああ。そうだが?」
いつの間に頼んだのだろうか。
「いやね、ここのお嬢さんに頼まれたんですよ。ミックスピザ」
おっさんが、平べったい箱を開けた。
サラミとピーマン、挽肉で構築された、オーソドックスなピザだ。できたてなのか、まだチーズがプチプチとうまそうな音を立てている。
銘柄を見ると、確かにパイロンがいつも食べている銘柄だ。オッサンの制服も同様である。
「いくらだ?」
俺は財布を取り出す。あとで真琴に立て替えてもらえばいい。
「Lサイズですから、銀二〇枚でございます」
二〇〇〇円相当か。Lサイズでこの値段は安いな。店員に銀貨を数枚渡す。
「毎度あり」
銀貨を受け取った店員は、そそくさと去って行った。
「どうした?」
入れ替わりで、クヌギが掃除から帰ってくる。
「いい匂いだのう」
「ピザだってよ」
料理人の娘であるクヌギに確認してもらう。
問題点はないと分かった。至って普通のピザであると。
「このピザ、どうするか」
「食べてしまっていいんじゃないか?」
「そうだな。少し食べて、二人が帰ってきたら、残りを食わせてやるか」
クヌギの意見を取り入れ、少量だけ食べることに。
「うん、うまい」
普通のピザだが、労働後の腹に染み渡るような深みのある味だ。
「ただいまー。爽慈郎、来てくれたんだ。クヌギちゃんもお疲れ様」
パイロンたちが戻ってきた。
「ところで、お前らピザなんか頼んでたんだな」
「え?」と、パイロンが頭に疑問符を生やす。
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