クヌギの役割を相談

「魔王と最強の四天王という垣根を越えてお二方が結ばれた結果……」


「このポンコツが産まれたんだな。だいたいわかった」


 俺と真琴が、同じような視線をパイロンに送る。


「ひーどーいーっ」

 頬を膨らませながら、パイロンがコーヒー牛乳をズビズビと啜る。


「でもなぁ。ママは今、入院中なんだよね」

「なんと。ご病気か?」

「う、うん」と、なぜか申し訳なさそうに肯定した。


 いったい、何があったんだ? 重い病気にかかっているなら、心配だ。


「見舞いに行かなくていいのか?」

「うん。お留守番を頼まれてるから」


 言いづらそうにしているパイロンに代わって、真琴が代弁する。

「実は、奥方様が体調を崩したのは、お嬢様の料理を味見しすぎて、顔中ニキビだらけになったからです」


「な、なんだと?」

 開いた口が塞がらない。


「お医者様も、甘い物と乳製品の摂りすぎだって言ってました。でも元々乳製品好きだったらしくて、退院にはもうちょっと掛かるらしいのです」


「パイロン、お前の親父さんが出て行っている理由って、お前のお袋さんの看病か?」


「そうだよ」と、パイロンが平然と語る。


 パイロンの作るスイーツを食い過ぎて。どんだけ食わせたんだ? そういえば、俺が来る前は料理がそんなにうまくなかったんだよな。


 母親も食い意地が張りすぎだろ。


「しかして、留守の城を守らねばならんのであれば、尚更戦力が必要である。是非、其めを幹部に」


「ちょっと待った。その決断、俺に預からせてくれないか?」

 俺が提案すると、クヌギは鋭い視線を俺に向けてきた。


「なんと? 人の子よ、我が剣術に不満があると申すか?」


「いや。腕っ節に否定はしない」


 負けたとは言え、パイロンとほぼ互角に戦えるだけの力があるなら、誰も文句は言わないだろう。

 だが、俺にはやってもらいたい事があった。


「パイロン、耳を貸してくれ」

 俺は、パイロンの耳元に顔を近づける。


 横向けって、パイロン。なんで正面を向く。なんで目を閉じる。


「実は、クヌギに掃除のテクを伝授したい」

「ふむふむ」と、パイロンは腕を組む。


 これだけの動きができるんだ。あいつの腕は掃除にもきっと役に立つ。


「どうか、掃除に協力してくれるように説得してくれないか?」


「どーしよっかなー」と、顎に手を当てて、パイロンがウンウンと首を縦に振る。


 やはり、問題があるのか?


「アイデアはいいんだけどさ、相手は剣術家として自分を売りに来てるわけじゃん? だから、難しいんじゃない?」


「城の全貌を把握する為に暫し滞在を、と説明すればいいのでは?」


 俺達が話していると、真琴が横から提案してきた。


 なんだかんだと理由を付けて、クヌギに説明。

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