ガラクタをマジックアイテムとしてリサイクル!

「そうなると、どうなるの?」


「マジックアイテムとして、冒険者に拾ってもらえる」


 売られる可能性もあるが、捨てられることはないだろう。腐っても魔王が所持していたクラスの装備だから。


「もらい物に細工するの?」


「あげたんだから、お前がどう使おうと関係ない。もらい物ってのは、本来渡しただけで満足しているからな。気持ちの問題だろ」


 渡し主の気持ちを深く気にしすぎると、相手もつけあがる。

 いらない物はいらないという割り切りが大事なのだ。


 誰かの不要品は、誰かの必需品でもある。その心理を突く。


「フリマには、出せないよな。出品者に見つかる可能性がある。ならば、事情を知らない冒険者の手に渡れば」


「タンスの肥やしにするより、誰かに使ってもらう方がお洋服達も嬉しいよね」


 パイロンは納得してくれたようだ。


 早速とばかりに服を原子レベルまで分解し、再構築する。みるみるうちに、豪華なキルトアーマーが完成されていく。


「こんなもんかな?」

 腕で汗を拭いながら、パイロンは一息つく。


「さすがです、お嬢様。単なるキルトアーマーなのに、この輝き。紳士用と婦人用も用意する事も忘れていないという周到さも」


 防寒特化の羊毛鎧、魔法使い用の軽金属鎧の他には、男女兼用アイテムも作り出す。退魔法マント、魔獣の皮で作られた耐火コート、怪力を生み出す腕輪などが、衣装部屋に並ぶ。


 あれだけあった不要品が、パイロンの魔力によってあっという間に様々なマジックアイテムへと変化した。すべて、魔法装束が施され、従来の製品より遥かに頑丈で、魔法防御力も高い。


「お前、すごいんだな」


 パイロンのマジックアイテム生成術に、俺は圧倒された。


「えっへん」

 パイロンが腰に手を当てる。


 アドリブで言ってみただけなのに、この適応力だ。


 器用さだけでなく、行動力や発想力にもパイロンは優れている。


 主にもらい物関連はこれで片付いた。


「では、早速移設の手配を致します」


 ス魔ホで真琴が方々へ電話をかけ始める。おそらくダンジョンのボスが相手だろう。


「このままやっていけば、すぐに片付きそうだな」

「じゃあ、台所に行こうよ。クレープご馳走するよっ」


 台所に行こうとしたそのとき、真琴が苦々しい顔になった。震える手で、ス魔ホを切る。


「どうしたの、マーゴット? 怖い顔」


「残念ながら、お茶のお時間はお預けになりました」


 真琴の一言で、俺達は作業を中断せざるを得なくなった。


「何があったの、マーゴット?」

「お客様です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る