パイロン・ファッションショー
「どうした、まだ服に未練があるのか?」
「未練ってほどじゃないんだけど、処分するかどうか決めきれないって感じで」
見た目が豪華で貴重なのだが、センスがなくてアイテムとしても使えない。
自分には刺さらないが、他人は喜びそう。
そこの境界線で悩んでいるそうだ。
「だとしたら、実用的な物かどうかで選べばいいいんじゃないか?」
「そこなんだよねぇ……」と、眉をひそめながら、パイロンは無言で悩み出す。やはり、使えるかどうか悩んでいるようだ。
「これもかわいいし、これもなあ。着てみたいな」
このままでは夜が明けてしまいそうだ。俺だって帰らないと。
「そうだ。こうなったらさ、爽慈郎が決めてよ」
「俺が? どうやって?」
女のファッションセンスになんて明るくないぞ。
「いいの。わたし、これ全部着てみるよ。それで、爽慈郎のリアクションで決めることにするから」
なぜ俺の顔が服の判断基準になるか不明だ。まあ、本人に遣る気が出たようだし、付き合ってやるか。
「うーんと、最初はこれかな?」
パイロンが念力を使って、瞬間早着替えを行う。
白のカーディガンとピンクのプリーツスカートである。
これはダンジョン行きとなった。
俺の顔に出てしまったらしい。
「次はこれね」
次なるパイロンの姿は、ピンクのピチピチセーターに、チェックのフリルスカートだ。足は黒のストッキング。これは合格だったようで、タンスに戻された。
ファッションショーに付き合わされて、正直辟易する。
だが、グッとくるセットもあって、俺は思わず顔が熱くなった。
「爽慈郎って、ちょっとコスプレ好きなところあるのかな? 会社のツナギとかのデザインって、爽慈郎の考えでしょ」
パイロンが白のストッキングを脱いで、タンスにしまう。
「ほっとけ! センスが悪くて悪かったな!」
「遊び心があって、いいじゃん」
この調子で、自分の気に入った服以外は全てダンジョンへと送り込む。
「わあ、すごい。あっという間に少なくなってきたよ、爽慈郎」
気がつくと、服の山が段々と小さくなっていく。
「それにしても、捨てる服が相当あるよね。いっそ誰かに譲ろうかな? でもなぁ、小さい頃の服なんか無理だよね……」
処分する後ろめたさで、パイロンの表情が沈む。
「確かお前、服とか変形できるんだったな?」
俺があげた作業着も、ミニスカタイプに変形させて着用している。
「いっそ、服やアクセを分解して、鎧に変形させればいい。それをまとめて、ダンジョンに隠してしまえばどうだ?」
パイロンは不思議そうな表情を浮かべた。
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