メイド展示

 つまり、パイロンの城を片付ける時間を取られてしまうのだ。


「めんどくさい奴らだ。適当にやってればいいのに」

「それは違うよぉ。何でも楽しまないと」


 賛同してくれるかと思ったが、意外にも反論が返ってきた。


「だが、学校は半強制的だからな。やらされてる感がどうしても付きまとう」


「だからだよ。それなら尚更、楽しい文化祭にしないと後悔しちゃうよ」


 そんなものだろうか。


「舞台もいいし、展示も内容次第では面白いよ。メイド喫茶とかお化け屋敷だけが、文化祭じゃないって」


 余計に難しい。学生が反応してくれるだろうか。


「いっそさぁ、爽慈郎のお掃除テクを展示にすればいいじゃない?」


「ヒンシュクを買うぞ。そんなマニアックな展示なんて」


「いいじゃん。わたし、見に行きたい」

 パイロンは目を輝かせている。


「爽慈郎のクラスは何が第一希望だったの? そこから逆算して、どういう企画がウケるか考えようよ」


「希望も何も、定番のメイド喫茶だ」


 だが、喫茶店にはメイドというか給仕が普通にいるものだ。メイド喫茶という呼び名すらちょっとおかしい気がするのだが。


「メイドかぁ……そうだ! 王宮メイドの仕事風景の展示なんてどう? それだったら、爽慈郎の掃除テクもお披露目できるよ! クラスの女子にメイド服も着せられるよ。ミニスカじゃなくって本物の!」


 目を輝かせてパイロンが構想を語る。


「なるほど。いいな、それ」


 悪い話ではない。


 俺も当時の王宮がどのような掃除方法を使っていたのか気になるし。


 何より、クラスの女子にメイド服を着せるというアイデアが気に入った。これならクラスも盛り上がると思う。


「だが、ウチにはまとまった予算がない。メイド服なんてすぐには」


「メイド服なら山ほどあるからあげるよ! メイド服を着たい子がいるなら言ってみてね」


 ありがたい提案だった。


「でも、いいのか?」


「わたし、こう見えても魔王なんで!」

 ス魔ホを取り出し、パイロンは真琴に連絡を入れる。


「真琴はどこにいるんだ?」


 今日は、学校にも来なかったが。


「屋台で使う、キッチンカーの手配だよ。ずっと部屋に籠もってる」


 移動販売車両を使うのか。本格的だな。


「OKだって」と、パイロンは指で輪を作った。

「当時の王宮がどんなだったか、資料も探してくれるって」

 

 真琴によると、魔界とそんなに変わらないらしい。


「分かった。一応提案してみるよ。ありがとうな」


「わたしも楽しみだもん」


「じゃあ、お礼にキッチン掃除を始めよう。お前の屋台も成功して欲しいからな」


「ありがとう! お願い!」

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