第三章 新入社員はロリババア!

魔界フリマ

 魔王城の掃除をはじめて、一週間が経つ。


 いつものように魔王城へと降り立った。この空間転移も手慣れたものだ。まるで、この場所こそ自分のいるべき場所のように錯覚してしまう。


 スケルトン作業員を導入して以降、作業時間が劇的に改善されていた。

 なんと言っても、学校に行っている間も作業しているのがありがたい。

 学校で遅れても、こうして作業をこなしてくれている。俺の体力も持つようになってきたし、いいことずくめだ。


 考えたら、パイロンの部屋の中で、浴室だけ手つかずだったのを思い出す。頻繁に使うから、きれいにするタイミングがつかめなかったのだ。この際だから掃除してしまうか。


 確か、浴室は誰もいないはず。


「ん? カーテンが閉まってるな」


 使用中か? パイロンは確か、外の住人と話し合いだからと留守にしているはずだけど。


「まったく、シャワーが出っぱなしじゃないか。止めないと」


 カーテンを開く。


「ひゃん!」

 そこには、素っ裸のパイロンがシャワーを浴びていた。


「わあ!」

 俺は後ろを向いた。


「会議じゃなかったのかよ!」

 カーテンを閉めることも忘れ、俺は呆然と立ち尽くして硬直する。


「もう終わったもーん」

 落ち着いた表情で、パイロンはバスタオルを身体に巻く。


「爽慈郎ってば、直接来てくれたらいいのに」


「ばか! 撤収だ撤収! ここは後回しにする!」


 抱きついてこようとするパイロンを、カーテンで防御した。

 ここはダメだ。浴室の掃除を中断し、他のエリアへ。


 バスローブ姿のパイロンがソファに寝転んでいた。髪が若干濡れている。仰向けになって足を組むと、パイロンの真っ白い太股が露わになった。


 生唾を飲み込みつつ、きわめて平静を装う。


「ところで、何の相談してたんだよ?」

「うーんとね。魔界で大々的なフリーマーケットが行われるの」

「お前も参加するのか?」


 ううん、とパイロンが首を振った。

「企画と場所の提供だよ。わたしの担当はそこで出る屋台の運営と総括だよ」


 おお、と俺は思わず声を漏らす。


「あと、開催の場でを提供してくれたので、挨拶だけでもコメント下さい、って言われて。その後は自由行動してもいいですよって」


「規模は?」

「この魔王城の四分の一くらいかなぁ」


 そんな大勢の人が集まるイベントを、運営しているってのか?


「できるのか、お前に?」


 本当にできるかどうか不安になっていた。


「できるもん。これでも引っ張りだこなんだから!」


 パイロンは頬を膨らませて、不満を露わにする。


「お前の手腕が不安なんじゃない。一人で大変じゃないか、って聞いてるんだが?」

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