爽慈郎特製 スケルトン軍団!

「これ以上、地球人にここの位置情報をお教えするわけにはいきません。混乱を招きます。それに、こんな城や、私たちを見ても平然としていられるのは、あなたくらいでしょう」


 まあ、そんな変人だから俺を招いたんだろうし。


「じゃあ、何か秘策はないか? メイドを雇うとか」


「雇うにしても、訓練まで相当掛かります。あなたの掃除術だって一朝一夕ではないのでしょう? 我々にさえ習得困難でしたから」


「あー、俺がもう一人いればなあ……」

 俺が呟くと、真琴が天啓を得たように手を叩く。


「そうですわ。いい手があります」

 真琴が一冊の本を召還した。


 ヘドロに真っ黒い絵の具をドバッと混ぜたような色彩の、おどろおどろしい表紙である。


「髪の毛を一本だけ下さい」


「おう」と、俺は髪の毛を引き抜く。


 俺から髪の毛を受け取ると、真琴は持っている本に挟んだ。なにやら呪文のような言葉を唱え始める。


 表紙が緑色の光を放つ。表面のヘドロが形を成して床にドロリと垂れる。


 反射的に、雑巾を持って液体を拭こうとした。


「待って。汚れじゃないから」と、パイロンが俺を手で制す。


 真琴とパイロンが向かい合うように並ぶ。

 ゴニョゴニョと呪文を唱え始めた。


 俺の知っている世界の言葉ではない。この世界でのみ通じる言語か。


 泥が骨の標本みたいな形を取った。

 いわゆるスケルトンってヤツか。


 スケルトンはまるでおもちゃの兵隊のように次々と姿を現し、部屋を埋め尽くすほどの数にふくれあがる。


 数は百体を軽く超えてるんじゃないか? スケルトンには、俺と同じツナギが装備されている。


「スケルトンを数千体呼び出します。幸い、掃除するくらいなら、データ並列で爽慈郎様のご意志と直結するくらいで済みそうです」


 おいおい、物騒じゃないか。


「俺は無事でいられるんだろうな?」


「操作するのは、召還主である私です。あなたは知恵さえ貸してくださればいいのです。意識を共感していますから、汚れの見逃しもありません。常時、これを付けていて下さい」


 真琴が渡してくれたのは、デフォルメされたドクロのネックレスだ。


 ドクロを撫でると、何もない空間に、五つのモニターが発現した。浴室や、各フロアの様子が見える。


「これで、各所に配置したスケルトンの様子を窺えます。モニターを操作して、指示を送れば各フロアにいるスケルトンに命令を送れます」


「防犯カメラみたいだな」


「これを身に付けていれば、あなたが学校に行っている間でも、スケルトンは掃除をしてくれます。微調整は爽慈郎様にお任せしますね」


 それはいいな。寝ながらでも掃除ができるってワケだ。

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