ダストバスターズ、始動!

 ドアが開かない。鍵は掛かっていないのに。


「魔法で閉じ込めたな? クソッ、開けろ」

 ドアをドンドンと叩く。だが、応答はなし。


「別にいいよ。不意打ちじゃなかったら見られても」


「……着替え終わったら言ってくれ」


 仕方なく、俺はドアとにらめっこを決め込む。


 衣擦れの音がする。なんだか背徳的な気分だ。掃除をするだけなのに、なんだか心臓に悪い。


「終わったよぉ」

 ちょうど着替え終わるタイミングだったらしい。やけに早いな。


 俺は二人に向き直った。


「はあ!?」

 俺は目が飛び出そうになる。


 真琴はいいのだ。普通にツナギを着こなしている。

 ダサくなるかと思ったが、それでも知的な感じが損なわれていない。青紫というカラーリングが当たりだったんだろう。


 問題はパイロンだ。

 ツナギを用意したはずだが、なんでコイツだけミニのフレアスカートとニーソなんだよ。色はオレンジだからいいとして、いつの間に作り替えたのか。


「お前、なんだその格好? さては、魔法か何か使ったな?」


「だって、ツナギ姿なんて可愛くないんだもーん」

 またもくるりんと回ってかわいいアピールをする。


 頭が痛くなってきた。


「お前は掃除をナメてるのか? 遊びじゃないんだぞ」

「わたしだって、それくらい分かってるもんっ。でも楽しみたいじゃない?」


 言いたいことは分からなくはない。

 掃除はただでさえ地味で大変だ。

 どこか楽しめる要素がないと続かない。


 誰もが俺のように、掃除自体に喜びを見いだせるわけじゃないしな。


 俺も、衣装で言い合いする時間が惜しい。

 時間が二ヶ月しかないわけで。


「あのさぁ、胸に付いてるロゴは何?」

「ダストバスターズのマーク。俺が考えてる会社名だ」


 ロゴまで作ってあるのだ。

 手足の生えたゴミ袋が、立入禁止のマークに道を塞がれている。


「ダストバスターズねえ。なんか可愛くなーい」

 パイロンが俺のデザインセンスにダメ出しをしてきた。


 こればっかりは素人だからな。絵が描けないし。


「掃除を始めるぞ。ここって、一応コンセントがあるんだな?」


 コンビニ弁当を食ってると聞いたから、レンジ用のコンセントくらいはあると思っていたが。


 辺りを見渡すと、パソコンまで置いてある。


「結構ハイテクなんだな。なんでもかんでも魔法で済ますのかと思ってた」


「スホもあるんだよ」と、パイロンが小型端末を見せびらかす。


「そこは当て字にしなくていいんだよ」


 コンセントがあるなら、ある程度の家電製品があるはずだ。掃除機も使える。

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