第二章 掃除開始!

ラッキースケベ

 掃除開始一日目である、土曜日を迎えた。


 俺はホームセンターに寄り、必要な備品を買い込んだ。愛用のドラムバッグがパンパンになるまで詰め込む。


 直後、バッグを持って書物庫へ。今日は更に、キャリーバッグを二つ追加している。


 こんなのを引きずって登校したからクラスメイトから不審がられたが、「掃除道具だ」と言ったら納得してくれた。


 俺の掃除バカッぷりは、クラスにも知れ渡っている。今日も英語の授業で、「purify」を「浄化」と訳すべきところを「殺菌」と訳し、教師に注意されたばかりだ。


 放課後の資材運びは、真琴も手伝ってくれた。


「すまんな、志垣」

「いいえ、頼んだのはこちらなのですから遠慮なさらず」


「さて、もう魔方陣から普通に入れるんだよな?」

「はい。どうぞ」


 志垣真琴の描いた魔方陣によって、俺は魔方陣から好きに魔王城へ移動できるのだ。


 魔方陣に到着した俺は、ドラムバッグを降ろす。真琴が持っていたカバンを引き受け、ドラムバッグのチャックを開けた。


 真琴のカバンから、ノートらしきものが落ちる。


「おい、真琴。落とし物だ」


 俺が拾った途端、真琴はババッと俺の手からノートを取り上げた。ハアハアと、冷や汗をかきながらバッグに直す。


「すまん。企業秘密的な物だったみたいだな?」


「ええ。申し訳ありません」

 息を整えながら、いつもの真琴に戻る。 


「じゃあ俺、着替えるから」


「はい。先に行ってお待ちしています」


 準備をしておくか。俺はバッグからオレンジ色のツナギを取り出す。制服からツナギに着替え準備完了。


 パイロンが待っているといけない。急いで支度を完了する。

 魔方陣の上に立つと、一瞬で魔王城の内部へと入り込めた。


「来てやったぞ、ポンコツ魔女め――」

「はえ?」


 俺の眼の前に、半裸のパイロンが口をポカンと開けていた。薄いピンクの下着姿で、白いTシャツに袖を通している。


「……てえええええ!」


「ふみゃああああ!」

 パイロンが自分を抱くようにして振り向く。


 俺は慌てて背を向けた。


「うわああ、スマン、着替え中だったのか!」

「今日はまだ余裕あるかなーって、のんびりしてたの! 不意打ちは大胆すぎるよぉ」


 衣擦れの音を聞きながら、俺はひたすら弁解する。


「それはそうと、真琴はどこだ?」

「マーゴット? あの娘も着替えてるところだよ?」


「お待たせしました」

 言うが早く、真琴が姿を見せた……のだが。


「なあ、志垣さんよ、その格好は?」

「見て分かりませんか? ジャージです」

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