クエスト:二ヶ月以内に魔王城を掃除しろ!
金には困っていないらしく、世界中の城を買いあさってもお釣りが来るほどの蓄えはあるらしい。
「だってぇ、かわいそうじゃん。ロクに使われずに、捨てられちゃうなんてさ。なんの為に生まれてきたんだっての」
不要品の中でも、一際役に立たないものばかり狙って買うという。お手頃価格なのが救いだというが、使って上げなければそれこそ意味がない。放置されているだけ。
その結果がこれだ。城にはゴミが散乱し、隣の部屋にすらロクに立ち寄れない状態に。
「どれだけハシャゲば、ここまで汚せるんだ? 一ヶ月でここまで汚せる奴なんて、そうそういないぞ」
魔王城は汚部屋どころか、ゴミ屋敷と化している。
魔族のスケールは半端ではない。
どう考えても数十年分のゴミが溜まっていた。
パイロンに視線を移すと、あからさまにパイロンは視線を反らす。
「お前、何か隠しているだろ?」
「お嬢様が言いづらそうなので」
追求しようとしたら、真琴に先手を取られた。
実は、パイロンの散らかし癖は子供の頃からだという。
魔王に見つかるとどうなるか分からない。
考えた末、パイロンは転送魔法を編み出し、ゴミをそこへ捨ててきた。
数十年の間ずっと、ゴミを手作りの不思議空間に転送していたのだ。
おかげで、魔王やメイドにすら見つからなかったらしい。
「魔王様が家を空けて気が緩んだのでしょう。魔王様がいなくなった瞬間、ボンッと」
真琴が両手を広げた。
不思議空間転送魔法は、パイロンの集中力に依存していた。監視者がいなくなった途端、転送魔法が解けてしまったのである。
つまり、城を埋め尽くしているのは、パイロンが捨ててきた数十年分のゴミだという。
不思議空間を再構成しようにも、元の大きさにするのは不可能らしい。
「こっそりゴミを捨てろよ。眼を盗むくらいできただろ?」
パイロンは首を振る。
「無理だよ。ずっと見られていたんだもん」
「私も助力しようとしたんですが」
「それで、俺が呼び出された理由は? 部屋を片づけてくれっていうのはわかったが、なぜ今なんだ?」
「二ヶ月後に、魔王様が帰ってくるのです。もし、魔王様が帰ってきてこの惨状を見たら、卒倒するでしょう。それまでにお屋敷を掃除して頂きたく」
なるほど、急ぐわな。
「メイドはいないのか? こういったのは、本来メイドの仕事だろ?」
「そうなんだけどぉ、全員出払っちゃった」
全員、遠征に連れて行ったのか。
「これは、試練でもあるのです」
「試練だと?」
真琴の説明によると、パイロンは近く、魔王を引き継ぐ儀式を控えているのだとか。
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