第9話ABCのB

終始、不機嫌な圭介は、周りから恐がられる存在でもあり頼もしいという存在もある。


あれから遥香との面会は拒絶している。


遥香は、圭介に会って話したい事があるらしいが…。


圭介は、根本的に妊娠とはどういう意味なのかを考え始めた。


秘書という存在を作って複数の被験者達のアンケートを取った。


恋?愛?


圭介は、分からなかった。


ずっと研究室という檻の中にいたから…。


男女ともに異性を意識しその行為に至るのは高校生ぐらいからだとアンケートには書かれていた。


圭介は、恋愛に苦い思い出しかない。


遥香…。


幻想を描いていた自分がバカみたいだ。


男女が肉体関係をもつのをモニター越しに見るのではなく


生身で見て自分が体験する事が大切な事だと気が付いた。


しかし、遥香以外としたいとは考えられなかった。


肉体は反応しても気持ち良くも何とも思わなかった。


遥香を痛みつけたこの手に恐怖する姿に感じていた。


一ヶ月経過して遥香と面会した。


遥香は、震えていた。


圭介は、遥香をある場所に連れて行った。


「好きという気持ちは脆くないと聞く。」


遥香に圭介は、言った。


「これから見るのは約束とかを打ち破るかもしれない。」


「はい…。」


遥香は、覇気がすっかりなくなっていた。


第三工場に車で向かっていた。


到着すると圭介を待つ工場長がすぐに寄って来た。


「お疲れ様です、はい。」


「例の被験者は?」


「すこぶる元気です。今、現在もやり続けています。」


工場内に入ると一人の男にみんな列を作って女達が並んでいた。


遥香は、へたりこんでしまった。


嘘だ…。嘘だ…。と呟いていた。


被験者Aは遥香の婚約者だった。


「被験者Aはずっとあんな感じですか?」


圭介は、工場長に聞いた。


「はい、初日からガンガンですよ。」


と嬉しそうに言った。


被験者Aの前には大勢の女達の行列が並んでいた。


「遥香、まだ見るか?」


「…。もう良いです。」


車に乗って第一工場に戻った。


「ゆっくり休みなさい。」


と圭介は、遥香の肩を抱いて言った。


遥香の中で何かが壊れた。

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