第6話人身売買

「え?それって人身売買じゃないか?」


「そうですよ。」


スタッフの野際千里は悪ぶった訳でもなくはっきり言った。


「アジア諸国の人身売買しているブローカーから金で子供を買うんですよ。」


「…。」


「綺麗事は言ってられませんよね?妊娠誘発剤は万能ではないですよ。」


圭介は、少し考えて承諾した。


人身売買か…。


親から引き離される気持ちは圭介にも経験がある。


母さん…。


お前の親はこれからはわたしだけだ!


孝の言葉は母さんが母親失格と言っているようなものだった。


ただ今でも会いたくなる。


どうしたら良いのか…。


次の週から、大量の人間が入って来た。


野際千里が圭介の耳元で夜の食事の約束をしてきた。


圭介は、目で了解と言った。


食事と言っても会社の食堂だった。


「新川さんは大学で研究をしてたんですよね?」


「うん、鬱病の人の脳に働きかけて症状を軽くする薬を開発してたんだ。」


「凄い。」


「全然、凄くないよ。治せなかった人ばかりだったよ。問診した人が次の日飛び降り自殺したりした事もあったり、リスカ、大量に薬を飲んで植物状態になったりで失敗した方が多いかも。」


「でも、助かった人もいた?」


「うん…。」


圭介は、千里の夜の誘いを断って工場長室のモニターを見つめていた。


人間がモルモットに見えた。


人身売買は、成功して妊娠率も上がった。


そして第二工場を建設した。


第二工場の工場長を千里に任命した。

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