第5話誤解

「妊娠誘発剤が効かない?ウソですよね?ドクター。」


「効いてはいるんですが…。数十名くらいにしか効き目は今のところ見当たりません。」


「それじゃあ、新しい工場を作っても意味がないじゃないか!」


工場長室の中で圭介はグルグル歩きながら頭を抱えていた。


「あの…人工受精はどうでしょうか?」

ドクターが提案した。


「それで子供は増えるのかい?」


「はい。優秀なDNAがあれば質も量も増えます。」


「君は、未来が恐くないのかい?」


「え?どういう事ですか?」


「みんなコピーロボットのような人間達が出来る。個性がなくなってしまう。いや、総合的一般常識が理解出来ないかもしれない。」


「他に良い案はないのかい?」


「今出来る事は全てやりつくしたと思います。」


「新薬を作り出すんだ。何億かかっても良い。妊娠誘発剤を超える新薬を。」


「分かりました。」


「じゃあ、今のままじゃあ、わたしは解放されないって事?」


遥香は、イライラしたように圭介に言った。


「大丈夫、新薬が出来れば直ぐにでも解放されるよ。」


「信じられない!」


「じゃあ、新薬を試してみるかい?」


「何でわたしが被験者にならなきゃいけないわけ?」


「ごめん…。僕も焦ってるんだ。質と量のノルマを超さないと父親に何をされるか分からない。」


「で、わたしはここで規則正しく刑務所生活を送れば良いのね?」


疲れきった表情をしている圭介には何も答えられなかった。


面会を終えて圭介が工場長室に入ると一人のスタッフが待っていたかのように敬礼した。


「工場長、お困りの様子ですね。」


「あぁ、上手く子供を作り出せない。」



「わたし、闇ルートを知ってますよ。」


「本当かい?」


藁わもすがる気持ちだった。

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