第38話 真贋
――やはりな。
あれはトンデモナイ代物だぞ。
予測はしていたが。
この目で見るまでは信じられなかったが……。
あれは既に結界まで形成しているじやないか。
それも時と空間に干渉してやがる!
これは彩加の仕業どころではない。
それにしてもあれをくれてやるなんて。
信じられん使い方だ。
そもそも――あれをどっから盗んできたのやら。
ちょっとやそっとではあんなの手に入らんぞ。
さては彩加の奴。
なにかを奪われたな。
つまりは本性を止められたのだな……。
やはり、彩加の本性とあの力は均衡していたな!
だが、今となっては、その本性が贋物と成り下がり、得た力だけは、そのうつわに本物として残った。
とどのつまり今回は、彩加は最期まで、ただの半人前か……。
利用されよって。
「あの業突張りめ!」
思わず声が出た。
そして残ったのは制御不能の強大な力。
純粋な力だけだ。
それも半人前に気ままに渡すなんて殺人的行為――いや、自殺行為。否、もはや完全なテロ行為だろう。
へタをすれば、この世界すら危ないぞ。
しかも私の愛弟子で実験するなど言語道断。
この代償は高く付く。
しかしながら、奇跡の一端が垣間見えるのも術師にとっては僥倖すぎる幸運だ。
こんな時にでも、そう思えるのは術師の性か……。
その一点だけにおいては
――いや、まてよ。
そもそもが仕組まれていたものであったなら、この空間には必ず観測者がいるはず。
「クククッ。なるほど、そういうことか。それなら、そろいも揃って踊らされたとい
うわけだ。だが此所まできたら私は最期まで踊りきるとしよう。わざわざ異なる世界
の境を越えてまでやって来た観客に悪い。だが、此所まで利用されるなのなら、私の
解答がどのくらいの点数なのか、神様から直に聞きたいものだがな……」
――ククッ。もっとも、たかだか仙人ぶぜいの私の解答では役不足かも知れんがね……。
「さて、私の解答は彼の眼鏡に適うかな……どちらにしても分の悪い話だな」
そうシニカルに苫笑した。
静奈は双眼鏡を椅子に投げ捨てると事務所のドアを開け放った。
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