第36話 静奈の秘策

「――あははははツ。これだけ言えば彩加の奴はキレて時間通り、それも真っ正面か

ら正々堂々息巻いて乗り込んでくるぞ」

「本当に大丈夫か――静奈。なんか不安になってきた。あと聞いてなかったけ勝算ってあるんだろうな」

「ああ、大丈夫だ。こっちの思った通りの能力だったなら問題無い。そんなに不安そ

うに見るな。あんな篦棒べらぼうな奇蹟もどきのほとんどのモノがマガイモノだ。ただ、奇蹟のように錯覚させるだけなら、魔法を三連鎖くらいで組み合わせれば私にだって演出できるものさ。ただ準備が大変なだけだよ。これで策は完成したぞ。さあ、玲奈も手伝ってくれ!」

 静奈は図面を広げると肩を成らして腕まくりをした。

 あたしは、その妙案とやらの準備に付き合わされることになった。


               *


 ――10時間後。

「……なあ静奈、本当にこれで良いのかな?」

「ああ、物事の本質なんて見極めたら実に単純なものさ。これぞシンプル・イズ・べ

スト!!」

 あたしたちは出来上がった派手な制作物の上で座り込んでいた。

「いいや、この物体のことだよ」

「ああ、これか。だが考えても見ろこれだけのモノをあれだけの短時間で構築できる

私の技能は完璧だ。まさに天才だな。遠い昔に神童と呼ばれていた頃が懐かしい」

「……最期に聞いておくけどさ、あたしたちの勝率って何%だよ……」

 出来上がったモノを眺めて、あたしは静奈に真意を問いただしたい気分になった。

「ああ、効くか効かないか、これは二つに一つだから1:1で50%だな! あはは

ツー」

 静奈は地上3メートルの高さから眼下に見える風景を見て大声で朗らかに笑った。

 あたしはそれ以上追究しなかった。

 どうせ本番までもう2時開もない。

 結果なんて直ぐにわかるだろう。

 いまさら考えたって無駄だ。

 ――負けても責任は静奈が取るだろ。

「ふあ~~~う」

 欠仲をしながら首を左右に振るとバキバキと音が嗚り響いた。

 今のあたしは疲れ果てていた。

 静奈の策というものが思った以上に手間が掛かったからだろう。

 少しでも眠っておこう。

 空を見ると、もう太陽は一番高いところにあった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る