第28話 世界の狭間



 あたしは暗闇にいた。

 辺りには何も無かった。

 見つめていると徐々にピントが合ってゆく。

 世界の果てがあるならこんな風だろうか……。

 そう思った。

 そしてあたしは一弥と向かい合っていた事に気づいた。

「さようなら――玲奈」

 そう一弥は呟いた。

 俯いた表情は角度が悪くて読み取れない。

「何をいってるんだ一弥。あたし、全然わからないよ」

「もう駄目なんだ。総ては終ってしまたんだ。もう僕は行かなきゃ。僕は世界のすべてに絶望したんだ」

「だったら、あたしも連れて行ってくれ。あたし、一弥の行くところなら何処でもついて行くよ!」

「それは無理だ――玲奈」

「なぜなんだ一弥!」

 あたしは泣きながら一弥の胸を叩いていた。

 一弥も泣いていた。

 だが決して抱き締めてはくれなかった。

 瞳を見るともう一弥はあたしを見ていない。

「――君はもう壊れているから」

 その言葉が一弥の口からこぼれ落ちた。

 途端、最期の薄明が尽き果てて、闇は深く世界を別ち、この腕は一弥から離れ落ちた。

 もう触れることは出来ない。

 それは永遠の別れ。

 懸け離れた世界はもう二度と触れあうことはない。

 世界の狭間で、あたしの手は一弥の手を掴むことが出来なかった……。


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