第21話 ピンクの水筒
あれは夢だったのかしら。
どうにか跳ねられる前に向こう岸まで渡れたから良まるで狐につままれたみたいだった。
いようなものの……。
そう反芻していると私の右手には怪しげな水筒が握られていた。
随分と握りしめていたらしく右手は暫くの開だ固まっていた。
毒々しいピンク色の水筒はステンレス製で、どうやら保温も出来るようである。
私は少し冷静に物事を考えてみることにした。
とにかく記憶を整理しなくては……。
そう思って私は夜の公園に向かった。
ファミレスでも良かったのだが、怪しげなモノを持って入る勇気を私が持ち合わせていなかったからだ。
幸い今夜は風もなく昼の熱すぎる陽気がまだ地面を温めて肌寒くもない。
それにしても、これは何だろう。
チャプチャプと音がしてるから、容器には液体が入っていることは間違いようがないけれども……。
私は電灯から光が降りそそぐベンチに座り込むと恐る恐るコップ状の蓋を開けた。
すると中には短い手紙が入っていることに気がついた。手紙を広げると短く、この液体の名前と用法が簡潔に書いてあった。
その通信販売で購人した商品の取説のような当たり障りのない文句が踊り。
注意書きの方が本文を超越するように裏面一面ビッシリと書かれてあった。
もし、これを私が自分で購入していたなら速攻の問答無用でクーリングオフするところだ。
なんたって怪しすぎる。
だがしかし、今の私は最高に運が良いはずだ。
――なら、これは本物だろう。
それは今までの経験から導かれたモノで単に自分の思い込みだとか、百年に一度の幸運とかいうレベルではなくて、私白身の運気が数倍、いや数百倍アップしているだけという状況なのだから。
何も心配はいらない筈だ。
その液体の要項はすでに把握している。
強運と、この薬さえあれば鬼に金棒だ。
もう手抜かりなど何もない。
大通りに差し掛かると手を挙げた。
すると瞬時にタクシーが止まり、後部ドアが開かれた。タクシーに乗り込むと、 一弥の部屋を運転手に伝えた。
私はもう迷わない。
走り出す車窓に自分の顔を映して頷いた。
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