第14話 夢現

 


 何か音がする。

 だが、私は夢の中だ。

 それはわかる。

 しかし、それを拒むように私の精神は目覚めようとしているみたいだ。

 これは鬼の仕業だろうか?

 だが、何かが行われた形跡は見えない。

 既に肉体は眠らされていた。

 だとすればこの違和感はなんだというのだろう。

 覚醒する私の精神は肉体とは遊離して、外界を見ていた。

 これは良くある現象だが、もう私は肉体の目を使っていなかった。

 最初はぼんやりと、徐々にピントが合っていく。

 あれは、静柰さん。

 大急ぎで帰ってきたのだろうか……

 否、似ているが違う誰かだ。

 その後ろ姿から女性と感じた。

 私は前に回り込む。

 その先にある顔を見つめると、相手は微笑み、そして諭すような表情のあとに攻撃を仕掛けてきた。

 思わず手で顔を覆うと凄まじい衝撃に打ち抜かれ私の身体が飛ばされていた。

 そして今、自分が幽体であると思い直して愕然とした。

 これは夢ではないのだ。

 幽体を殴れる人間がいるなんて。

 いや、その前に幽体を見える人間がいるのも珍しいことなのに!

 そう走馬燈のように、色々なことが頭の中を巡り回っては不味い――ならもう逃げるしかない。

 だが私が逃げよとした瞬間には捕らえられた。

 正確に言えば組伏せられて横目で 彼女の表情を盗み見ると、その顔は邪悪な笑みがこぼれていた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る