第9話  特製チーズケーキ×5

「じやあ、この特製チーズケーキ五つください♪」

 私はパピヨンで特製チーズケーキを購入した。

 もちろん一弥と静柰さんの様子を伺うためだ。

 私は人数分より少し多めに買ってゆく主義だ。

 大は小を兼ねる。

 小は大を兼ねない。

 これは単純明快で私の好きな言葉だ。

 本当はあまり想像も着かないけど、これで事務所への突然やってきた『お客様』にでさえ余裕を持って出迎えられるってわけ。

 ――見て、この完璧な気配りを!。

 まあ、これって建前なんだけど。

 さり気なく私の思慮深さをアピールできるのさ。

 それに気づかれなかったって、今日このまま一弥と二人っきりでお茶!

 それで明日は静柰さんの講義が終わってから一弥も交えてお茶! お茶! お茶! 

 ふふん。完璧じやない!

 あの馬鹿猫の入り込む余地はないわ!

 その為の特製チーズケーキ×5

 私の計画に無駄はあり得ない!

 そう拳を空高く握りしめる。

 あからさまにチーズケーキ×3だったら、一弥が悲しそうに玲奈の分は……って言うに決まっているんだから。

 これでそのリスクも回避できるし、長期的に見れば、こんなケーキでも無駄にもならないんだからね。

 それにあの馬鹿猫もしばらくは臍をまげてここには近づかないだろうし。

 一石二鳥ならぬ一石三鳥!

 これぞ完璧な神算鬼謀!

 私って天才♪

 しかし、引っかかるのは玲奈の言葉だった。

 静柰さんがいないと言うことに少々不安を感じないでもない

別の場所で仕事をしている可能性だってあるんだし。

 駄目めよ――彩加。

 こんなの泥棒猫の奸計よ。

 貴方はもう少し師匠を信じなきや!

 それでこそ師弟愛ってもんよね♪

 いでもひょっとしたらなんて考えちゃ駄目!

 そんなことを取り留めなく思い描きながら私は特製チーズケーキを片手に事務所に直行した。


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