第7話 パピヨンのブルベリーパイ
パピヨンは行きつけの場所と成りつつあった。
だって玲奈が一弥との待ち合わせとかに使っているみたいなんだ。
それで二人で居る所を見かけたら同じテーブルに押しかけて一弥の隣を奪うことにしている。それが私の日課と成りつつあった。
だけども私には玲奈ほどの白由度が無いから思ったほどの効化も期待できなかった。
――本当に大学生って自由で良いわね。
それにやり過ぎれば一弥にも気づかれるだろうしね。正直、一弥には嫌な娘とは勘づかれたくないしさ。でも現場を見たら邪魔をしないわけには行かない。そんなジレンマを最近よく考えたりするもんなトホホ……。
私、最近そんなんばっかだ~!
ああ、私って自分が嫌な子のランキング一位だわ……。
横目でチラリと玲奈の顔を盗み見れば何だか機嫌が良くなってるしまったく単純な奴。
人の気も知らないでさ。
結局、私のひとり相撲なんだろうか。
はァ――なんか白然と溜息が漏れた。
そういえば葉子と一緒の時に、このバカ猫と逢った事もあったっけ……。
あの時は一弥からの伝言を玲奈が伝えに来たんだった。
あれからだいぶ経つな。
そんな事を考えてると本目のおすすめボードにブルベリーパイの文字が見えた。
「わあ、今日はブルーペリーの日なんだ」
「へえ、今日ってブルベリーパイなのか」
そう玲奈と声が重なった。
私たち言葉は少々違っても同じ気持ちには変わりない。
もう私たちの瞳は爛々と輝かせていた。
目替わりパイは、この店の名物だ。
私たちは問答無用でこのパイを頼む事を決定していた。
なぜなら、その日替わりに法則などと言うものは皆無で、ほとんどマスターの気まぐれか気分次第。
何度も来ている私ですら、絶品と噂されるこのブルーベリーパイを一度しか食べたことがないのだ。
それは目の前の玲奈でも同じなのだろう。
即座に爛々と輝いた瞳を私は見逃さなかった。
あいつはムカツクけども完全な本物の御嬢様だ。
だから、あいつの捻くれた性根は腐っているけど、その外見と、その肥えた舌には一目、置かざるおえない。
悔しいが、私はコイツの舌と調理能力には正直、勝てる気がしない。
一度食べたことがあるけど本当に美味しいのだ。
それは同じ食材を使ったのかと思えるほどの腕だった。
故に、確信できるのは、この店のブルペリーパイはおそらくこの近辺ではまず無敵だろうと言うこと。
それは確かな確証だった。
あとは忘れないうちに珈琲も同時にお願いしていた。
注文を受け取ると給仕は微笑みながら行ってしまったが、直ぐさま戻って来た。
今度の顔は強張って背には負のオーラを纏って前触れだと思われた。
これは、なんだか良くない。
それから彼女はオズオズとブルベリーパイがもう切れてしまったことを告げたのだ!
まだ、こんなに日は高いのにである!!
それは一大事だった。
もはや事件だと言っても差し支えない。
私は無論、さすがの玲奈さえその事実に狼狽えてしまった。
だが良く話を聞いてみると、お一人様だけはラストオーダー可能であると給仕は言い放ったのである!
もちろん。お一人様分は確保した。
そんなの当たり前だ!!
それに対して私たちの意見は一致する。
だが問題は、そのお一人様をどうするかだろう。
「さて!」
徐に頻を鳴らして準備を整える玲奈。
「ほほう。アンタやる気なのね! 可愛い年下の後輩に譲るとか、半分個にするとか、そういう発想は毛頭無いわけね」
そう丹念に腕を捻りながら答える私。
「あぁん。それはそうだろう。なんで、あたしが譲らなきやいけないんだ? 半分個。冗談じやない。彩加、お前だって譲る気なんて全然ないんだろ」
私の瞳を覗き込んで、不思議そうにキョトンとする玲奈。
「まあいいわ。神さまは、私たちの今までの行為をずっと見ててくださっているんですもの。この善良で清廉潔白な私が負けるわけ無いわ。アンタと違ってね――玲奈!」
「彩加、お前ね。白分から善良で清廉潔白なんていわない方が良いぞ! あつかましい! どれだけ厚顔無恥だお前。都合の良いときだけ神様を頼ってもしょうがないぞ。それに、こんなのは運だろ。確率は三分の一。決着までの平均回数は1・5回。今更、神に祈ったってもう遅い!」
「ふん。もう心理戦なの。アンタ勤揺させて勝とうなんてみっともない。誰かの受け売りなんでしょ! このヘッポコ軍師!」
「ふん。いってろ!」
「おもしろいわ。やってやるわよ!」
玲奈め、この勝負絶対に譲らないから!
私たちはテーブルの対岸の敵を互いに睨付けながら戦闘態勢に入った!
「最初はグ――」
「ジャンケンポイ!」
奇しくも同じ形をだした私たち!
私の中では目まぐるしく思考が回転する。
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