第5話  藤倉一弥のお仕事



 事務所開きから一ヶ月が経過していた。

 僕は調べ上げたメモ帳を大学ノートに纏めていた。

 静柰さんからの期限は今日までだった。お陰で昨日から一睡もしてない。

 ふと、このまえ見かけた友人の綾瀬亮一がノートパソコンを持っていたことを思いだして少しだけ羨ましくなった。まあ、基本的に下調べの段階では変わらないものだけど。それでもデータの図表化とかではやっぱりパソコンの右に出るモノはないと思う。

 言葉だけだと実態を掴みにくい。

 数字を使えば少しはましだけど、それよりも図表が入ればより客観的に判断できるようになる。だが判断するのはあくまでもクライアントであって僕ではない。だけどやっぱり見やすいものは見やすい。

 事務所に行けばパソコンがあるけれど昨日はギリギリまで下調べが終わらなかったから、その恩恵に預かっていない。それは最新型ではないけれどもオフィスワークには充分だろう。

 そういえば静柰さんがパソコンのパンフレットを眺めていたから釘を刺しておかないと。

 しかもハイエンドモデルなんか見てたからな。

 あの人、新しい物好きだから。

 静柰さん――ウチの収支ではあんな最新なのは買えっこないんです……って。

 ふうッ。とりあえず後はパソコンで人力して見栄えを良くすれば問題なしっと!

 僕は仲びをして頚を左右に振った。

 コキコキと小気味の良い音が頭の中に響いた。

 僕はシャワーで身体を洗い流した。

 少しはリフレッシュ出来たかも知れない。

 だが、そのままソファーに倒れ込み、直ぐにソファーからずり落ちてしまった。

 でも、その状況を把握しないまま、僕は意識を無くした。






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