『車輪の下』
ふと思い出すのが、『車輪の下』著:ヘルマン・ヘッセである。
二〇一一年テレビアニメシリーズEDテーマ「サムライハート(Some Like It Hot!!)」から十年、数々のタッグを組み、二〇一三年の「劇場版銀魂完結篇 万事屋よ永遠なれ」では主題歌「現状ディストラクション」を歌い、ついに迎えた最終回「銀魂THE FINAL」で主題歌を歌ったSPYAIRの『轍~Wadachi~』について、あーでもないこーでもないと、涙していたって苦しくたって離れていたって忘れないでいつになったってどこにいたって独りきりじゃないと歌いあげた物語……ではもちろんない。
ヘルマン・ヘッセ、自伝的小説である。
ドイツ南西部のシュバルツバルトに住む、真面目で臆病なハンスは町始まって以来の秀才といわれる。親や周囲の期待のなか、超難関の有名神学校に二位の成績で合格。勉強を中心に生きていた彼は神学校で生活していくうちに、頭痛や集中力の欠如、倦怠感などの症状が現れて成績も低下、幻覚などをみるようになり閉じこもりがちな生活を送るようになっていく。
成績が下がったハンスに対して、教師は怒り、軽蔑して見放してしまう。彼らは優秀さを求めるあまり、ハンスを労ろうとするものは誰ひとりとしていなかった。
最終的に勉強に手がつかなくなり、神学校を退学。故郷に戻ったハンスを迎える人々の態度は冷たく、手助けが必要な彼に対して誰一人として手を差し伸べるものはいなかった。
父親のすすめで機械工の見習いとなり、ものを作る喜びを知るも、絶望感や同級生に対する劣等感などが積み重なり、仕事をやめ、自堕落な生活の果てに、溺死のような表現で終わるのだった。
受験勉強や就職などによる周囲からの期待。
自分自身の将来への期待と不安と現実の失望。
自分の過去の行動と挫折、絶望に苦悩する主人公。
誰もが共感できる痛みを体現する主人公は、絶望のうちに自ら幕を引く。
希望が一切なく、周囲の人々が追い詰め、彼を理解しようともしなかった。
だが、彼にも非はある。
自由と引き換えに、自ら周囲の期待に答えようとする道を選んだのだ。
ヘッセは南独カルプの牧師の家庭に生まれ、神学校に進むが「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走。職を転々した後、書店員となり、一九〇四年の『郷愁』の成功で作家生活に入る。
第一第二次大戦時は非戦論者として苦境に立ったのちスイス国籍を取得し、在住。人間の精神の幸福を問う作品を著し、一九四六年ノーベル文学賞を受賞した。
あえて手にしようとおもって読んだのではない。
家の本棚にあったのだ。
もともと「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と言っていたほどなので、彼の詩集もそうだが叙情的な表現が見受けられる。
本作はアンハッピーエンドで終わる。
つまり、偉人伝など他人の成功体験から人生訓を学ぶのではなく、失敗談からどう生きるべきかを学べる作品となっている。
自分らしさと自由を捨てて、他人の期待に答える生き方をするか。あるいは、自分らしさを貫き通す自由な生き方を選ぶか。
他人の期待に答えることはつまり、他人の人生を生きるのと同じである。絶望してしまう人は、知らず知らずのうちに他人の人生を生きてしまっていることを、本作品の主人公ハンスは教えてくれている。
自分らしさと自由を持って生きるにしても、必ず成功するとは限らないし、失敗や挫折はつきまとう。信念と情熱と目的がなければ貫き通すことはできないが、自分こそ人生の主人公だと実感する生き方を送れるだろう。
迷ったとき、成功談より失敗談から学べと教えてくれる作品の一つである。
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