『魂にメスはいらない』
心理学でおもいだすのは、『魂にメスはいらない ユング心理学講義』著:河合隼雄・谷川俊太郎である。
伝説のWeb連載「小説を書くためのプチアドバイス」に書きおろしやコラムを加え、人称、構成、推敲など基本からタイトルのつけ方や取材方法までをコース仕立てにまとめ、長編短編問わず「書く人」「書きたい人」へ贈る『マナーはいらない 小説の書きかた講座』について、あーでもないこーでもないと、手書き構想メモも初公開された三浦しをんファン必読の書……のことではもちろんない。
臨床心理学者の河合隼雄氏と詩人の谷川俊太郎氏が、「こころ」について語り合った対談である。副題のとおり、谷川氏が聞き手にまわって質問しながら時に詩人として意見を述べ、河合氏はユング心理学の基礎知識や周辺について語っていく。
心理学やユングに興味を持っていてもなかなか手が出せない、そんな人にとっての入門書として、最適ともおもわれる。
【河合隼雄】
一九二八年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。臨床心理学者。京都大学名誉教授。国際日本文化研究センター教授。スイスのユング研究所に留学後、日本にユング派心理療法を確立した。著書に『こころの処方箋』『ウソツキクラブ短信』『こどもはおもしろい』『昔話の深層』『日本人とアイデンティティ』『あなたが子どもだったころ』『明恵 夢を生きる』『母性社会日本の病理』などがある。
【谷川俊太郎】
一九三一年東京生まれ。詩人。『二十億光年の孤独』以来、『落首九十九』『ことばあそびうた』『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』『世間知ラズ』などの詩集で現代詩の最先端を拓く。『スヌーピーのもっと気楽に1〜5』『マザーグースのうた』などの翻訳をはじめ、絵本、童話など、幅広い分野で活躍をつづける。
谷川俊太郎につられて本書を手にし、河合隼雄の名をはじめて知った。ひとことで言えば、河合隼雄のおじちゃんはおもしろい。内容もさることながら、なによりも彼の人柄に興味を持った。
対談をテープで録音したものを書き起こしていると思うのだけれど、兵庫県出身の彼が話すユーモアが、読んでいて楽しかったのである。
大人は、いつもまじめで、偉ぶっているのに、彼は違う。素晴らしいことは素晴らしいといい、わからないことにはわからない、難しければむずかしいと素直に話す。
当時の私としては、斬新で新鮮で、河合隼雄が茶目っ気溢れた人に思えたのだ。正しいことを正しいという大人よりも、茶目っ気を忘れない大人になろうとおもったのをおもい出す。
専門書のたぐいは往々にして面白くない。(海外のものは、書き出しに本人の日常が垣間見える話題をおりまぜていることが多く、それが面白い。日本のものは、そういう部分がない)ふんぞり返って偉そうだったり、つくったようなものの言い方をしたり、面白みにかけるものは多い。
小説ではないのだけれど、実に面白い人だとおもい、河合隼雄の書籍を順番に少しずつ読んでいくことになる。
だから訃報を聞いたときは驚き、惜しい人をなくしたものだとおもったことをよく覚えている。
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